-訪日プログラム-
-Programs of Visiting Japan-

日露学生フォーラム

今回が6回目となる日露学生フォーラム。今年は、文部科学省が行うグローバル30(大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)のロシアとの窓口となっている東北大学と協力し、仙台の同大学片平キャンパスにおいて日本とロシアの学生58名が一同に会し、3つの分科会(エネルギー、産業協力、長寿)に分かれて決められたテーマについてのディスカッションを行いました。



全体テーマ:「日本とロシア-日露新時代の創造」“Japan and Russia – Creation of the New Era”

分科会テーマ

A. エネルギー(Energy)
地球温暖化及び新興国におけるエネルギー消費量の増大が進む中、地球全体規模でのエネルギー問題(二酸化炭素削減を含む)について日露両国はどのように協力し取り組むことができるか。
In the context of the global warming and increasing energy consumption in emerging countries, how can Japan and Russia cooperate to address the global-scale energy problems (including CO2 reduction)?

B. 産業協力(Industrial Cooperation)
日露両国はいかなる産業分野(例えば工業生産、農業、漁業、医療)において、またどのように協力し共に発展していくことができるか。
How and in which industrial field (e.g. manufacturing industry, agriculture, fishery and medical care) can Japan and Russia cooperate to successfully develop together?

C. 長寿(Longevity)
日露両国の平均寿命に大きな差がある中で、共に長寿の恩恵を受けるために、両国はどのように協力できるか。長寿化に伴う問題点(生涯教育、高度医療など)にどのように取り組むべきか。
How can Japan and Russia cooperate to enjoy longevity while there is a big difference in the average life expectancy in both countries? How should they address the problems related to longevity (lifelong learning, advanced medical treatment, etc.)?

日程

7月 1日 日本人学生による事前勉強会
9月23日 ロシア人学生来日
9月24日 ロシア人学生 東京視察
9月25日 参加学生全員仙台へ移動、オリエンテーション、東北大学による歓迎レセプション
9月26日 【日露学生フォーラム】開会式、全体会合、分科会
9月27日 【日露学生フォーラム】発表、閉会式、日本文化体験、蔵王宿泊
9月28日 日本文化体験、東日本大震災被災地(名取市閖上地区)視察、仙台駅で解散
9月29日 ロシア人学生東京視察
9月30日 ロシア人学生帰国

日本では、6月中には参加者の人選が終わり、7月頭の事前勉強会を経て、各自準備を進めました。分科会での議事・進行は学生主体で行うこととしていましたが、事前に十分な準備を行おうとする日本側と、来日するまで全く連絡をしてこないけれど実際の発表や議論では能力を発揮するロシア側という従来の傾向は相変わらずでした。ただ、実際フォーラムが始まると、限られた時間でできるだけお互いの共通理解を見出そうとする姿勢がとても印象的でした。今回のフォーラムが終始明るく協力的な雰囲気の中で行われたのは、参加者達の意識の高さを物語っているように思われます。また、東北大学の全面的な協力により、プログラムをスムーズに実施することができました。

開会式(9月26日)

里見総長より、今回のフォーラムのテーマの説明があり、エネルギー、産業協力、長寿ともに非常に重要なテーマであり、両国の将来の関係を良くするためにも有益なテーマであると指摘がありました。また、このような機会に参加者間での友情を深めることも重要であるとのお話がありました。

野口在ハバロフスク総領事(前 外務省欧州局ロシア交流室長)からは、これまでのフォーラムの経緯と、過去の参加者の人数(約300人)、春の首脳会談で交流を拡大することが合意された中での絶好のタイミングの交流プログラムであるとのお話がありました。

ロシア側代表として、ニジニー・ノヴゴロド国立大学の同行教師(ペトロヴァ社会学部副学部長)より、フォーラムの関係者への感謝の意、テーマの重要さに加え、ロシア各地から参加があることの意義を強調する内容の話あり。また、今回のプログラムに文化交流が多く含まれていることへの評価にも言及がありました。



その後、日露の学生1名ずつ、基調報告を行いました。二人とも、このフォーラムへの期待を素直に、清々しく表現してくれました。

日本側代表:東京工業大学
井上毅郎さん
基調報告(PDF)

ロシア側代表:ニジニノヴゴロド国立大学
コンスタンチン・スハーノフさん
基調報告(PDF)

分科会

テーマ別に部屋に分かれて議論が行われました。議事・進行は学生主体で行われ、各分科会に東北大学よりアドバイザーの先生に1人ずつついていただきました。以下、各分科会の報告です。

A.エネルギー 報告者:富山大学 藤賀晃さん


エネルギー分科会報告書
エネルギー分科会代表 藤賀晃

どのように私たち学生が分科会を進行し話し合ったかを紹介するとともに良かった点悪かった点を振り返り、来年度以降のプログラムのための参考にしていただければ幸いです。尚、最終日のプレゼンを添付いたしました。少しでも当日の雰囲気が伝われば嬉しいです。
プレゼンテーション資料

【事前勉強会から当日まで】

事前勉強会で3つの分科会(長寿・エネルギー・産業協力。それぞれ10名ずつ)で分かれ、学生フォーラムで何を話したいかを相談しました。話したいトピックごとに関連性のあるものをまとめ、分科会を3つのGroup(エネルギー分科会では原発・エネルギー開発・環境問題の3つ)に分けました。そしてそれぞれリーダーを選出し、そのGroup内での話し合いのまとめ役・分科会全体への情報の共有を行うことを役目としました。分科会の流れや形式などemailのみでなくfacebookで共有したりチームリーダー同士でskypeで会議を行いました。またロシア側にも、同様にGroupを作ってもらいそれぞれリーダーを選出してもらい、リーダー同士で連絡を取り合いながら当日、どんな話し合いをしたいかについて連絡を取り合いました。共通のテーマを「日露協力」として各Group内で話し合いを深めて行きました。

【分科会の流れと形式】
13:00-14:30 Presentation in Group
14:30-14:40 Break
14:40-16:10 Discussion in Group
16:10-16:20 Break
16:20-16:50 Discussion in Energy session
16:50-17:00 Comment from Prof. Maruta
17:00-18:00 Making Presentation in Group

まずはGroup内で日露学生が1人ずつプレゼン(質疑応答を含め約10分)を行いました。そのあと、Group内でディスカッションをし、模造紙に話し合った内容をまとめました。その内容を分科会内で発表し、質疑応答の形式で話し合いました。その後、先生からのお話を頂き、最後に翌日の学生フォーラムのプレゼン資料作りを行いました。
それぞれのGroupではより密な話し合いができ、また分科会全体としても活発な話し合いができたと思います。
ロシア側には質疑応答を含めた10分プレゼンを準備してきてくださいとお願いしていました。事前の連絡をとるのに苦労し当日どうなるかと思いましたが、全員がしっかりとプレゼンを準備してきてくれていました。タイムスケジュールなど実は当日に大幅な変更(当初は全員が分科会内でプレゼンをする予定でした。そうすると、ディスカッションにあてる時間が減り内容がまとまらない可能性があり変更しました)があったのですが、ロシア側のリーダーならびにメンバーが協力的な人でフレキシブルに対応してくれました。もう少し事前に伝えておければよりスムーズでよかったと思います。

【今後のために】

たくさんのメンバーに支えられて無事に分科会を終えることができ今は感謝の気持ちで一杯です。話し合いを重ね、自分たちで修正を加えつつ進んできましたが、最初に設定した「日露協力」テーマのもとよく議論できたと思います。今後、日露学生フォーラムに参加される方は、何か共通のテーマやコンセプトを自分たちなりに考えて話し合いを行うと実りある議論になると思います。多種多様な人との議論はとても刺激的で楽しいですよ。
今回、分科会のリーダーを終えて日常に戻り感じることは、日露学生フォーラムのみならずいろいろなプログラムや身近に起こっていることに「当事者」として感じたり、考えたりする機会が増えたと思います。自分だったらどうするか、その視点をこの分科会を作り上げるプロセスを通じて学ばせて頂いたと思います。今回学んだことを糧としてこれからも考え、行動していきたいと思います。貴重な機会を与えてくださったすべての方々に感謝致します、どうもありがとうございました。



B.産業協力 報告者:立命館大学 柴田啓成さん


Japan-Russia Student Forum 2013
Industrial Cooperation
Hironari Shibata

Japan-Russia Student Forum 2013
“Industrial Cooperation” Report

   During the Japan-Russia Student Forum 2013, our group had an interesting discussion regarding the possibility of industrial cooperation between Japan and Russia. The whole discussion lasted for five hours in total. We have allocated the first hour and a half for individual presentations and the rest for open discussion. In the first part, each participant delivered a presentation about the topics they thought would be an important discipline for cooperation between the two countries. Some talked about the possible cooperation in the field of infrastructure, including railway transportation and pipelines for natural resource transportation. The field of manufacturing was another topic to be brought up. Other interesting topics were the cooperation in the field of medicine and space development.
   An open discussion followed individual presentations. In the open discussion we have discussed deeply about the topics that were brought up by each individual in the previous section. Having diverse opinions from both Japanese and Russian students made it a very fruitful discussion. The topics that we discussed in great detail were the field of transportation, manufacture, and medicine. The possible cooperation in the field of transportation included a construction of a new railway system to connect Sakhalin and Hokkaido. The railway will be able to transport not only natural resources, but it will also be able to move people and other manufactured products between the two countries. Another possible cooperation is exporting the Japanese high-speed railway system (Shinkansen) to the Russian Far East where the transportation system is still insufficient.    In the area of manufacturing, we focused on the fact that there is still a high demand for Japanese manufactured goods such as cars in Russia. The high demand for Japanese manufactured products would become one motivation for the Japanese firms to produce its products in Russia. Commodities produced in Russia can easily be shipped not only in Russia but also in other European countries. Commodity production in Russia would not only benefit the Japanese firms, but it will also provide labour opportunities in Russia.
   The cooperation in the medical field has many possibilities. First, there could be an exchange program for doctors between Japan and Russia. Second, the two countries can build a joint hospital to provide high-quality medical treatment to patients. Third, Japan and Russia should cooperate in medical research, sharing each other’s technology and experiences. The field of medicine still has a lot of room for development, making it an important field for cooperation.
   Through the course of our discussion, we realized that it is crucial to build a ‘mutually beneficial relationship’ between the two countries in order to have a long-lasting relationship. We have to remember that in the area of international relations, win-win relationship is important to build a sustainable relationship between the two parties.
   In conclusion, we were able to have a very productive discussion, while learning new perspectives from each other. The diversity in the topics discussed made us realize the possibility of a positive relationship between Japan and Russia. We strongly hope that this discussion would be a new starting point for Japan and Russia to form a strong long-lasting relationship with each other.


C.長寿 報告者:東北大学 新関康平さん


「長寿」分科会報告書

日本人学生リーダー:新関康平
1.分科会前にやるべきこと
・ロシア側参加者の問題意識を把握する 。
・関心のあるテーマを自身で選定し、各自5分の発表準備をする。
・日本側が個々人で何を発表するのかをロシア側へ公表する。
・日本側はテーマに偏りがないように予め2人ずつのグループを編成する。
・ロシア側にどのグループで質問・討議を行いたいか希望を取り、マッチングを行う。

2.分科会の流れ(所要時間4時間)
 ①分科会の流れの説明。
 ②日本人とロシア人を含めた5グループに分かれる。(ここまで10分ぐらい)
 ③互いに5分の発表後、10分間質疑・雑談を自由に行う 。(5人×15分=約75分)
 ④休憩を15分間取る。その間、ロシア側が他のグループにランダムで移動してもらう。
  予め日本人学生の発表テーマを全体に告知しておき、ロシア側が自分の興味のあるテーマに移動できるように手配する。
 ⑤再び、互いに5分発表し、10分間質疑・雑談を自由に行う。(約75分)
 ⑥15分間の休憩
 ⑦その後、全体で集合し、ロシア側と日本側から感想や新たな発見は何かを発表してもらう。一人2分以内×19人=約40分

3.ディスカッションの内容
 議論というより、価値観の交換というのが我々の分科会のスタイルであった。以下、日本人側の発表テーマを示しておく。
リタイヤ後の娯楽、ライフスタイル、アルコール文化、飲む酒の種類、日ロ間の移民・移住の推進について、ロシアの交通事故の状況、日本の交通事故防止技術、日露の社会保障制度比較、日本の高齢者についての現状と日常生活、日本人の寿命の推移と原因、長寿のメリット・デメリット、女性の社会進出による社会保障の充実
 尚、ロシア側全員のテーマは把握していない。参考までに例を挙げると、長寿の秘訣、ロシアの社会保障の瑕疵、日本の医療技術から学ぶ点、安楽死、ストレスを感じるロシア社会、ロシアの平均年齢の歴史的推移、孤独な高齢者、高齢者の社会参画である。

4.今後のために考えたこと
日露ほとんどの参加者が今回の分科会は有意義であり、満足であると申していた。それは、少数で深く両国の価値観の差異を知れたからであろう。勿論、全員の話を聞きたいという意見もあった。だが、少人数で不明点を気軽に質問できる点、発表中飽きることがなかった点を考えると、充実感があった分科会であったといえる。私は、本分科会は成功したと自負している。

新関さんの報告スピーチ

今回のフォーラムで印象的だったのは、できるだけ発言をしやすくするために、分科会でさらに小さいグループに分かれてみたり、必ずしも英語が得意でない参加者のために、母語で発言してそれを誰かが訳すというサポートシステムをその場で取り入れたり、という学生さん達の間の工夫でした。既成概念にとらわれず、その場の状況に応じてしなやかに対応する、そんな学生主体で行うことの良さを実感しました。
分科会の時間は、終わってみると「ディスカッションの時間が足りなかった」と多くの参加者から後日意見が寄せられました。今後の改善点とさせていただきます。

閉会式

モスクワ国立大学の同行者(言語学部講師)のプリャエヴァ氏より、今回のフォーラムについて、以下のようなコメントがありました。「各分科会は、それぞれ議論の方法は違ったが、どれも良い結果を出してくれた。このフォーラムにより参加者間の繋がりが強まることを確信している。参加者の皆さんは今は気がつかないかも知れないけれど、後になって貴重な経験であったことを実感すると思う。次のフォーラムが是非ロシアのどこかで行われることを願っている。」

最後に、東北大学ロシア交流推進室長木島教授より、 「昨日開会式の時には、日本人学生とロシア人学生は別々に座り、誰も笑っていなかったが、今は日露の学生が笑顔で混ざり合って座っている。これはこのフォーラムの意義そのものを表している。私の夢は、産業協力の議論の中であった、パイプラインを通じてひかれた新幹線に乗ってロシアに行くことだ。是非実現して欲しい。また、一つニュースがある。来年の3月にモスクワ大学が日本人100名を招待する予定がある。是非またその機会にお会いできればと思う。」とのお話があり、その後、参加者全員へ参加証が授与され、和やかな雰囲気の中で閉会式は終了しました。





参加者の声

日本では、まるで違う世界にいるかのような感じがしました。多くの視察や伝統に触れたことを通して、自分自身に新しい文化が開かれた感じがします。フォーラムは非常に友好的な雰囲気で行われ、異なる考え方を持つ友人達と真面目な議論を交わしました。最も大切なのは、誠実で素晴らしい日本人学生との出会いでした。モスクワに戻ってからも日本の学生さんとの交流は続いています。(ロシア人学生)

今回のフォーラムでの学んだことは、育ってきた環境も違えば、学校も専門も違う、信じている宗教も違えば、言葉も違う。「違い」を探せばきっときりがない、「違い」に注目するより「共通点」に注目した方がずっとスムーズにコミュニケーションできる、理解できるということです。これは日露のみならず世界規模で問題を考える際にも言えることだと感じました。(中略)日露学生フォーラムはどのセッションも充実し、たくさんのoutstandingな人たちに出会うことができ、大変刺激的でした。今回の出会いや経験をこれからも大切にし、今後に繋げていきたいと思います。(日本人学生)

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