-訪露プログラム-
-Programs of Visiting Russia-

室蘭工業大学と極東工科大学の学生交流グループ
北緯43度日露地方都市の工学系大学学生交流 ~人と自然が共存する環境づくりを目指して~

Shtym研究室との集合写真

平成20年10月の極東工科大学の学生招聘プログラムが終わった約2カ月後、今度は、室蘭工業大学の学生達がウラジオストクを訪問し、ロシアの学生たちに案内をしてもらいながら、研究内容はもちろんのこと、ロシアでの生活ぶりや伝統文化にも触れて、刺激いっぱいの1週間を過ごしました。以下、前回に引き続き、室蘭工業大学国際交流センター国際企画係長の荒木正子さんよりの報告です。


訪問団

室蘭工業大学 学生4名+教員1名

プログラムの主旨

日本とロシアの工学系大学学生が相互訪問を通じて日露の地方都市、特色ある港湾都市で異文化を体験し、相手国への理解を深めようとするものです。また、2008年G8北海道洞爺湖サミットが室蘭近郊で開催されたことから、室蘭工業大学学生と極東工科大学学生が交流を通じ友好関係を深めると共にグローバルな問題である地球環境問題及びエネルギー問題について共通の理解、共通の目標を持つことにより、今後の省エネルギー推進に資することを目的としています。

派遣期間

2008年12月6日(土) ~12月14日 (日) 室蘭工業大学からの訪問団一行は、12月4日(木)室蘭を出発し、新潟空港からウラジオストクに向けて出発するはずでしたが、悪天候のためウラジオストク空港が閉鎖されたため、新潟空港で足止めとなり、室蘭を出発して3日目の12月6日(土)ようやくウラジオストクに到着できました。このため当初予定した事業スケジュールを大幅に調整せざるを得なくなりました。しかし、受入側の極東工科大学がこの事態に迅速に対応してくださいましたので、訪問団は極東工科大学学生と再び交流を深めることができ、素晴らしいウラジオストク訪問の思い出をつくることができました。訪問団学生諸君からの報告は、下記のとおりです。

極東工科大学研究室訪問
(1) UCG研究室―Underground coal Gasification Technololgy(12月10日)

案内、説明者:マカロフ教授、G.ヴィクトリアさん

実験装置の見学の様子

マカロフ教授の研究室では、UCG技術(石炭の地下ガス化)を研究しています。UCG技術は、旧ソ連が世界で初めて実用化し、生産を続けてきた技術です。 UCG技術は、廃棄物がなく大気への放出物質もないことから近年、化石燃料の枯渇問題や環境問題への対応として再び世界で注目を集めています。先に室蘭工業大学を訪問したヴィクトリアさんから地質変形のストレスについての研究を説明していただき、実験装置の見学をしました。
地震の予測にも役立てることのできる研究で、地震が多い日本にも有益であるとマカロフ教授は述べていました。ビザ延長手続きを控えていたため、あまり多くの話は出来なかったのですが、室蘭工業大学にはないという大規模な実験装置も見ることができ、貴重な機会になったと思います。
(2) 冷暖房エネルギー研究室 (12月11日)

案内・説明者等:シュティム教授、大学院生

シュティム教授の研究室では、暖房や冷房のエネルギーについての研究を行っています。エネルギー資源大国のロシアですが、環境問題の世界的な動きを受けて、環境に配慮した自然エネルギー研究も進んでいるようです。

ロシア人学生から太陽光や風力といった、複数回使える自然エネルギーの利用や、雪と氷を利用した冷房についての研究テーマでプレゼンテーションをしてもらいました。また、地下の熱を利用し、暖房する方法についての研究も行っており、その際には様々なパイプのつなぎ方が考えられるということを知りました。プレゼンテーション終了後、実験室も見学しました。

(3) 日露研究発表会 (12月12日)

Shytm教授の部屋にて

シュティム教授研究室でエネルギー利用についての日露研究発表会が行われました。ロシア側は、シュティム教授、男子学生2名及び女子学生3名の計6名、日本側は、媚山教授、白川さん、そして荻沢さんの計3名が各自の研究テーマについて発表しました。

シュティム教授の図面を用いた研究説明は、海底にパイプを通して海底の熱を利用するというスケールの大きな珍しい計画であり、とても興味深かったです。また、シュティム研究室では研究中の技術を大学近辺の建築物に取り入れるなど、周辺地域と密接に関わりながら研究を進めているということが強く印象に残りました。

続いて、ロシア人学生及び日本側の発表も順次行われ、発表内容について活発な議論展開、アイデアの出し合いなどがありました。

日本側が発表した雪氷冷熱エネルギーについてはロシア側の関心が大きく、今後共同で研究を進めることができると思いました。

極東工科大学木材加工センター訪問(12月8日)

案内、説明者:ユーリ教授、M.アレクセイさん

左:耐久性のあるカッター 右:作業所の風景

極東ロシアは、ロシア全土の森林面積中の大きな割合を占める森林資源を有していますが、木材の近代的加工技術をもたないために林産業が育成されずに来ました。この木材加工センターは、極東地方の林産業育成とそれに関わる人材育成のため15年前に建設されました。その役割は大きく分けて3つあります。木材加工専門工の育成、木材部品などの製造・販売、コンサルティング、それから木材加工のための材料・器具等の研究・開発の3つです。当センターの研究成果として、従来の加工カッターよりも約200倍もの耐久性のあるカッターを開発したそうです。木材を節約するためベニヤと木材を合わせて使用する木を節約する技術、150m2の家を3週間で組み立てる工法の紹介もありました。環境保護につながる森林資源の合理的、効果的な利用のための工夫が感じられました。

作業場を見学させていただくと木材の乾燥機を始め日本の機械が多くありました。この機械を使い授業で学生たちが木材加工を学んでいるそうです。また、企業や個人から依頼を受け家具などの製造もしているそうです。


ウラジオストク近郊の日本企業訪問(12月9日)

案内等:吉川泉さん(三井物産ウラジオストク事務所長)

大規模中古車展示場

日野自動車の屋上からの眺め

初めにTAUコーポレーションを訪問し、ウラジオストク支社長からお話を聞きました。TAU社は日本の中古自動車や中古部品を日本から輸入しロシア国内へ販売している企業です。ロシアには国産車がありますが、日本の中古車のほうが人気があります。それは日本の中古車のほうがロシア国産車の新車よりも故障が少ないかららしいです。日本の技術力の高さを再認識しました。
次に輸入された中古車を置いておく大規模中古車展示場を見に行きました。様々な業者がそこで販売もしています。自家用車からクレーン車まで様々な車がありました。昔は5万台ほどあったらしいですが、現在は3万5千台に減ったそうです。次に最近「日野自動車」がロシア市場に進出して設立した「日野ロシア」を訪れました。トラック販売のショールームがありましたが不況のせいかほとんど展示はされていませんでした。


ウラジオストク日本センター訪問(12月10日)

説明者:所長 山本 博志さん

現在ウラジオストクが抱える大きな問題として、自動車の輸入規制があるそうです。自動車の約96%が日本車で、日本車の中古車市場がとても発展しています。しかし、輸入規制が決定されたので、これからは日本車が少なくなっていくと考えられます。そうすると、ウラジオストクの人々がみつけ発展させた中古車商売というものができなくなってしまうという問題があると語られていました。

また、ウラジオストクは学生が約10万人もいる学生の町でもあり、活気のある町です。しかし、ものづくりをしていないため企業の受け皿がありません。そのため、学生たちはヨーロッパなどの外へ出て行ってしまうそうです。北海道でも学生が同じように本州に出て行ってしまうと感じ、育った人材を失うのは残念なことであると思いました。

その他

休日やプログラムの合間を利用して、ロシアのダーチャにお邪魔させてもらったり、ロシアの伝統的な儀式を見たり、コンサートやサーカスを鑑賞しました。また、ウラジオストクならではの潜水艦を見学したりして、研究以外の分野でもロシアらしさを満喫しました。

ダーチャでのひととき
潜水艦内部で水兵さんと

<参加者の声>


参加した室蘭工業大学の学生に4つの質問を通じてウラジオストク訪問の感想を聞いてみました。質問は、次のとおりです。

      質問1. ウラジオストクを訪問して一番驚いたことは何ですか?
  1. 質問2. ウラジオストクを訪問して一番楽しかったことは何ですか?
  2. 質問3. ロシア人学生の印象は?
  3. 質問4. 相互訪問プログラム「北緯43度日露地方都市の工学系大学学生交流~人と自然が共存する環境づくりを目指して」へに参加した
       感想は?

大橋 貴文さん 建設システム工学科・修士1年

質問1.
最初に見たトイレや宿泊した部屋の浴室などのインフラです。日本で慣れきっている整った設備とは違い、水圧は弱く、お湯もほとんど出てこないシャワーはロシアに着いたばかりの私にとっては衝撃でした。日本の住環境の良さを実感しました。

質問2.
現地の人との交流です。堅い場所での関わりは言葉に苦労してばかりでしたが、最後のパーティーや街中を歩いた中で出会った人々との会話は言葉の壁を感じずにコミュニケーションをとることができ、今後も他国の人との関わりの中で、いろいろな文化や考え方を知りたいと強く思いました。


質問3.
おとなしめの印象を受けましたが、普段周りにいる日本人学生と比べて向上心や野心を感じ、好感が持てました。自分のやっている研究に誇りを持ち、今後自分が何をしていくかという点で、強い意志を持っていると思います。同じようにウラジオストクという街自体もこれからの発展に向けて活き活きしているという印象がありました。

質問4.
私の研究している住宅の分野では、日本の方がより高い技術を持っていると思います。そのため、技術に対する驚きは少なかったのですが、地域の環境により技術の発展の仕方に違いがあるのを感じ、面白い印象を受けました。今後、省エネを考慮して多くの住宅を造って行きたいと考えていますが、広く海外にも目を向け、日本の技術を国に合わせて応用していくことが大切かと感じました。

白川 晃さん 機械システム工学専攻・修士2年

質問1.
街中を走っている車の96%が日本車で,日本にいる時とほとんど変わらなかったことです。

質問2.
ダーチャを訪れ,週末の生活を見ることができ,滅多にできない経験をすることができたことです。

質問3.
ロシア人は無愛想,無表情のイメージがありましたが,全くそんなことはなく親切で良い人ばかりでした。

質問4.
省エネルギー化について,世界共通で行われているものであると改めて認識することができました。工科系大学の学生としては残りわずかですが,日々の生活において節電やエコドライブなどをするといった意識改革をすることができると思います。そうした一人ひとりの省エネが大きな省エネにつながると考えています。

荻沢 史晃さん 機械システム工学専攻・修士1年

質問1.
走っている車のほとんどは日本の中古車であり、右側通行なのにもかかわらず車のハンドルは右側なので車に乗っていてとても違和感がありました。 市内に信号が2、3個しかなくドライバーは隙を見て小道から大胆に侵入してくる所にも驚かされました。

質問2.
極東工科大学の様々な研究室を見学することが出来たのが楽しかったです。

質問3.
まじめな性格という印象を受けました。日本語を話す学生が何人かいたので日本が好きなのかと思いました。

質問4.
極東工科大学では雪、地熱や海洋熱、太陽光など自然エネルギーを利用した研究が盛んである印象を受けました。日本でもそのような研究は行われているので、お互いに協力し合ってより良い技術ができればよいと思いました。

若松 真広さん 情報工学専攻・修士1年

質問1.
まずは日本車が多かったことです。また路上駐車も多く、信号は数える程しかありませんでした。そのため、左折や右折をするときは、お互いに譲り合わなければなりませんでした。衝突した車も多数目撃しました。

質問2.
サーカスを観たことです。日本では観る機会が多々あるわけではないので、とても楽しかったです。街の探索も初めて観るものばかりだったので、とても楽しかったです。

質問3.
日本の学生よりも、研究に対して意欲的だったと感じました。そこは私も見習わなければならないと思います。また工学部にもかかわらず、女子学生の割合がとても高いです。

質問4.
私は石炭の地下ガス化(UCG)に関する研究を行っています。UCGは、ロシアが長い経験と高い技術力を有していますが、実用面で様々な問題があり、燃焼領域把握もその一つです。私はAEを用いて、燃焼領域を把握する技術について研究しています。ロシアと日本が協力することにより、この技術が確立されれば、環境に優しいクリーンテクノロジーUCGの実用化に向けて大きく前進することになります。私は、このように研究を通して環境に関心を持ち、そこから環境問題に貢献できる技術の手助けができればいいと思っています。また、そのために意欲的に研究に取り組んでいきたいと思います。

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