-日露学生・青年フォーラム-
-Japan Russia Youth Forum-

日露学生フォーラム 2019 in 信州

今回が8回目となる日露学生フォーラム。今年は、日露青年交流センター、信州大学およびロシア技術大学青年政策・国際関係センターとの共催で、信州大学松本キャンパスにおいて日本とロシアの学生60名が一同に会し、4つの分科会に分かれて決められたテーマについて英語で議論を行いました。


●全体テーマ「世界に向けた日本とロシアの協力」

Cooperation between Japan and Russia in the global perspective

●分科会テーマ

●A. 世界平和を維持するために青年が貢献できることとは
How to Contribute to Maintain World Peace
(ファシリテーター:仙石祐信州大学助教)

●B. 持続可能な開発目標を達成するために必要なこととは
Pursuing SDGs
(ファシリテーター:Amanda Schuetze信州大学助教)

●C. 次世代へのアプローチSociety 5.0で目指すものとは
Corresponding Next Generation (Society 5.0)
(ファシリテーター:加藤善子信州大学准教授)

●D. 異文化間対話を促進するには
Promoting Intercultural Dialogue
(ファシリテーター:加藤鉱三信州大学教授)

●日程

11月27日     ロシア人参加者来日
11月28日     ロシア人参加者東京都内視察
11月29日     参加者全員松本へ移動、オリエンテーション
11月30日     日露学生フォーラム 開会式、分科会、懇親会
12月01日     日露学生フォーラム 分科会ごとの発表、閉会式、松本市内合同散策、奥飛騨宿泊(旅館体験)
12月02日     参加者全員飛騨高山へ移動、高山宿泊(旅館体験)
12月03日     ロシア人参加者高山市内散策、東京へ移動
12月04日     ロシア人参加者帰国

ロシア側からは公募で選ばれた優秀な参加者が来日し、意欲的にフォーラムでの活動に取り組んでいました。
日本側の参加者は実施3か月前に人選が終わり、分科会ごとにリーダーと副リーダーを決め、自主的に事前準備に取り組んでもらいました。
松本に移動し、信州大学松本キャンパスで初めて顔合わせをした際には、日露双方の参加者がすぐに積極的にコミュニケーションをとりはじめ、会場となった教室は参加者の活発な議論で熱気に包まれました。

●開会式(11月30日)


信州大学内28番教室で開会式が執り行われました。司会進行は角田賢次信州大学国際部長が務めてくださいました。


田中清信州大学副学長より本フォーラムの全体テーマに関して説明があり、各テーマの重要性と議論の有益性についてお話がありました。
引き続いて来賓挨拶が行われました。

来賓:左から
大澤暁外務省欧州局ロシア交流室長代理
ロスチスラフ・ヴォイテホフスキー ロシア科学・高等教育省高等教育・青年政策国家政策局代表
グリゴリー・ペトゥシュコフ ロシア技術大学青年政策・国際関係センター長
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引き続いて基調講演が行われました。

イーゴリ・トルーシン信州大学教授からは、数学を専攻し、日本とドイツで教鞭を執りながら得た経験や、ロシアの故郷でのエピソードを交えながら、日露青年交流の重要性について報告が行われ、会場の参加者はみな興味深く聞いていました。

その後、日露の参加者が1名ずつ、基調報告を行いました。

日本側代表の尾迫志央理さん(神戸市外国語大学)は、ロシアにおける日本年(2018-2019)及び地域姉妹都市交流年(2020-2021)といった、最近の日露関係を象徴する行事に言及した上で、自身のロシア渡航や国際ボランティアフォーラム参加での体験談を交えながら、本フォーラム参加者に向け、お互いにこれまでに得た経験を共有することで更に将来に必要な見識を深めようと呼びかけました。



ロシア側代表のヤニーナ・アンドルシュケヴィチさん(バルト連邦大学大学院)からは、主に原子力、環境問題、AI、サイバーといった分野で日露の青年が協力していくことが可能であるとの見解が述べられました。


基調報告原稿(英語)・使用資料は以下のタイトルをクリックすると閲覧できます。




開会式の後、参加者同士がスムーズに議論に取り組めるよう、アイスブレーキングの時間が設けられ、参加者達は分科会の枠に収まることなく、時間の許す限り自由に交流していました。


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分科会

テーマ別に部屋に分かれて議論が行われました。議事・進行は学生主体で行われ、各分科会に信州大学よりモデレーターの先生に1人ずつついていただきました。翌日の発表でロールプレイングや動画を披露することが共通の活動目標として設定され、各分科会では準備が進められました。以下、各分科会のリーダーの参加報告です。

分科会A(世界平和への貢献):大阪大学 吉見さえさん
    
私がこのプログラムへの参加を決めたのは、サンクトペテルブルクへの1年間の留学を終えてすぐでした。以前にも訪ロプログラムへの参加をしたことがあり、今回日本で行われる日露学生フォーラムにも参加したいと考えました。今回は日本の学生が30人とロシアからが30人でした。ロシアではこの30人に対して500人もの応募があったと聞いて本当に驚きました。
1日目は信州大学で事前の勉強会がありました。日露青年交流センターの沖本康成事務局長から大変興味深いお話を頂きました。プーチン大統領がサンクトペテルブルクの第一副市長だったころのお話をはじめ、今回の分科会に関わる重要な議論項目まで取り上げて頂きました。核兵器の問題や、北極海の開発、クリミア問題など私も注目していたニュースに加え、サイバー攻撃やAIの兵器利用などについて私自身の知識はまだまだ浅いけれどもこれから考えていかないといけない問題だと思いました。分科会ごとに分かれて日本人の学生だけで今回のテーマについて話し合っているうちにロシア人の学生がやってきました。自己紹介をしていくと私が留学していた町からの学生もいることがわかりました。
2日目、開会式そしてアイスブレイクの後に各分科会が始まりました。分科会Aでは担当の先生が話の流れをあらかじめ考えていて下さり、とてもスムースにそして有意義に話し合いが進行しました。
まず初めに簡単な自己紹介をした後に二つのグループに分かれて各グループごとに議長、書記などの役割を決めました。そのあとに平和とは何かという根本的な議題について話し合いました。民族間の相互理解や核兵器の撤廃、個人の人権の確立など多彩な定義が挙げられました。
次に私たちは世界の平和を維持するために大学が何ができるかについて考えていきました。平和とは何か考えたときに挙げられた項目をもとにそれらを実現するために大学ができることを考えていきました。民族間の相互理解にはやはり人と人との交流が大切で交換留学生の受け入れを増やすなどの意見が多数でした。また平和に関する研究者を育てるために新しい学部を開設するなどユニークな意見もありました。
こうして話し合ったことを翌日分かりやすく伝えるために分科会Aではドラマ形式で行うことになりました。私たちのグループでは一人の大学生の提案がどんどん伝わっていきやがてはプーチンにまで届くというシナリオを考え、同じフレーズを特定の箇所で繰り返すことでインパクトがあり面白いドラマになったと思います。各自がセリフを覚えてきて発表に臨みました。ロシア人学生との会議は本当に有意義なものでした。
私はまたいずれロシアへ行くので今回のフォーラムで出会えた学生たちとはまたロシア出会うだろうと思います。今までロシアとはそこまで関わりがなかったと言っていた日本人の学生も絶対にロシアへ行きたいと言っているのを聞いて、私はこうした学生同士の交流活動は未来に本当に大きな影響を与えると思いました。やはり私がロシアへ留学へ行っていたというと、親世代の方たちは危なくないの?とかそういう声が多いですが、若い人の意見は変わってきているととても感じます。私たちが劇で発表したようにこうした少しの変化が大きな変化を生み出していくんだろうと思います。ロシアを専門とする身としてこの活動がずっと続いてほしいと願います。


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分科会B(持続可能な開発目標SDGs):創価大学 中澤暁さん

ロシアにおける日露青年フォーラムを含め今回で2回目の参加でしたが、ロシア人側は応募者500人の中から30人に選ばれ、日本人側も優秀なだけでなく熱量のある人たちばかりで多くの刺激を受けました。
分科会では、SDGsをテーマに、トピック1では、分野別に日本で問題になっている事柄、ロシアで問題になっている事柄を発表し、意見交換を行いました。特に、ゴミの分別に関して、日本のゴミ収集や分別方法について伝えると、ロシア人側はとても興味深そうに聞いてくれました。ロシアではゴミ分別が進んでおらず、環境だけでなく健康被害も出ているので、そのことについて伝えられたことは価値的だったと思います。また、LGBTのジェンダー平等に関して、ロシアはまだ性的マイノリティに対する偏見が強く、ジェンダーというと女性の社会進出ばかりが取り上げらがちだと感じました。
トピック2では、大学がSDGsに貢献できること、またなぜ大学が貢献しなければならないのか、SDGsを個人、大学、世界で分けた際にどの項目が一番重要かなどを話し合いました。最後には、5人で将来の持続可能な大学を表す「futurosity」をテーマに1分間のコマーシャルを作成し、全体の前で発表を行いました。コマーシャルでは、全世代型生涯学習を実現するための教育サービスや、ウォーターステーション設置、食堂の収入の一部を貧困国に寄付、再生可能エネルギーの使用など多くの意見が出ました。
分科会外では、ロシア人と共に温泉に入り、同じ部屋で寝泊りするという大変貴重な経験をすることができました。お互いの文化の話、勉強の話や個人的な話をし、日本とロシアという違いはあれど、それよりも多く共通する点や、人として尊敬できる点など多く見つけました。
私自身としては、昨年一年間ロシア留学をした際に、ロシア人の「暗い」「非協力的」というステレオタイプを疑いなく消し去ることができましたが、多くの日本人は余りにもロシアを知らなすぎると思います。それはメディアの報道が政治的なネガティブ報道が多く、あまりロシア人のリアルを伝えていないという原因が大きいと思います。両国民の異文化理解のため、そして両国の良いパートナーシップ構築のために、文化交流や人的交流の重要性を改めて認識しました。
今回のフォーラムを通して、新しい友人ができ、新しい興味関心が湧いた一方、優秀な人々の中で、改めて自分の実力のなさを実感し悔しい思いをしました。しかし、これからの学びの道は孤独なのではなく、私には、共に学び、熱い思いを持って高みを目指す仲間がいます。そういう仲間と出会う機会をいただけたということに感謝の思いでいっぱいです。今回のフォーラムをただの思い出とするのではなく、さらに貪欲に粘り強く語学力や知識を身につけていくためのスタート地点にしていきたいと思います。今回出会ったロシア人、日本人の仲間と友情をさらに広げ、勉強に励み、両国の友好の発展のために役立てる人間になりたいと思います。


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分科会C(Society 5.0):大阪大学 井上忠大さん

学び(考えたこと) Society 5.0 について

・無知に対する恐怖と心の準備
テクノロジーの発展に伴って訪れるであろう社会に対して、多くの人が恐怖を抱いていると聞くが、それは無知が故なのではないかと思うようになった。果たしてそういった人々がAIやIoTという技術を説明できるかは甚だ疑問であるし、わからないものに対して恐怖を抱くのは人の性である。
例えば、Aiによって仕事がなくなるというのは本当にそうだろうか。150年前の明治維新の時代、日本の9割の人間は農業へ従事していた。2019年現在、農業に携わる方々はほんに2~3%である。では、農業をしていた人々が仕事を失ったかと言うとそうでもない。より創造的で、建設的な仕事が生まれてきたはずである。
知らないからと言って厭うのではなく、これまでの歴史を正しく見つめ、テクノロジーを理解し、彼らの活用方法を考えることが大事なのではないかと思う。問題はテクノロジー側にあるのではなく、それを受け入れる人間側の心の準備ができていないことにあるのだろう。そういう意味では、これから来る社会変革に合わせて、人々が適応できるように教育・啓蒙の方法を変えなければいけないと感じている。

・人間というアイデンティティ
機械が人間のように働く社会が訪れたとき、人間というアイデンティティが大きく揺さぶられるのではないかと思う。
例えば、AIが描いた絵と人の描いた絵の見分けがつかなくなったとき、「人間とは何か、人間だけが生み出せるものとはなにか」という問いに我々はぶつかるのではないだろうか。(逆に、人型のロボットにも命があるのかという議論も生まれうる。)
今回のフォーラムではこのような哲学的な話はできなかったのだが、テクノロジーによる社会変革の一端で、新たな巨大宗教が生まれるような世界を妄想していた。

・非効率・人間らしさへの逆行(バランス)
Society 5.0のもたらすメリットとデメリットについて議論を重ねる中で、人は行き過ぎた効率に対して不安を感じるものだと認識した。便利・効率を求める反面で、そこに人の温かみや血の流れを感じるような工夫を敢えて加えることが、これからの社会のトレンドになるのではないか(それをどれだけ自然に行うかも重要)。結局物事はバランス(cf. アリストテレス「中庸」)なので、非効率への逆行がキーになると考えた。


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分科会D(異文化間対話):上智大学 K.M.さん

私が本事業を通して得られたことは大きく3つあります。
第一に、グループワークを通して自分の得意なこと、そして逆に苦手なことを明確にすることができました。私は分科会Dのリーダーを担当していたので他の学生の前で発言し、まとむなければならない場面や相手と意見を交換し、互いに納得することのできる意見を出さなければならない場面が多くありました。そのような場面を経験する中で、自分が今後組織をまとめる側になった際にどうすべきか、そういった改善すべき点を把握することができました。本事業に参加しなければ認識できていなかった盲点に気づけたことは大きな成果の一つであると考えます。この成果を糧に、組織内で共同作業に取り組む際には意識し、改善していきたいと思います。
第二に、本事業に参加した優秀な方々から刺激を得られたことです。当該フォーラムに参加していたロシアから・日本から集まった学生と実際に関わる中で、各々が高い志をもってこの事業に参加し、今後に活かしたいという強い気持ちを持っていることを改めて感じました。また、そういった方々と関わる中で視野を新たに広げることができました。特にロシアからきた学生からは、今まで訪れたときのない地域について知ることができ非常に貴重な経験となりました。このことは、私自身を鼓舞することにつながったと同時に、初心を思い出す契機となりました。この点で、普段の学生生活では得ることのできない成果を得られたと考えます。
第三に、発表に向けて準備・リサーチをする中で、異文化間対話の重要性を再確認することができました。本事業に参加するまで異文化間対話について聞いたことはありましたが、具体的な考え、たとえばどうすれば異文化間対話を促進することができるかなどを考えたことがありませんでした。しかし、当該フォーラムに参加することで、未来の社会を担っていく私たち若者こそが当事者意識をもって異文化間対話を促進する方法を考え、発信していかなければならないと肌で感じました。このことは今自分にできることは何かという意識を日常生活の中に取り入れることにつながりました。今後は、異文化間対話を促進する側として自分にできること、たとえば異文化交流のイベントに参加することや通訳として日本人と他国の人をつなげるなどして、学生としてできることをしていきたいと思います。 このワークショップで得られた、上記3つの学びは私の視野を広げたのみならず、新たな成長剤となりました。今後は、次世代を担う1人として異文化間対話促進に貢献していけるようこれらの学びを活かしていきたいと考えます。


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各分科会の発表

前日に練習したロールプレイングを中心に、各分科会で話し合った内容と、将来への提言を踏まえた発表が行われました。
準備が前日1日のみだったことから、照明や小道具・音響といった技術的部分に制限はあったものの、各グループが意匠を凝らしたプレゼンテーションを行いました。
その後、各分科会のモデレーターから講評があり、参加者のディスカッションへの意欲的な態度を評価するとともに、次世代において日露の青年間で積極的な協力が求められる点が強調されました。

各分科会の成果物は以下の分科会名をクリックすると閲覧できます。




分科会A
世界平和を維持するために青年が貢献できることとは


分科会B
持続可能な開発目標を達成するために必要なこととは


分科会C
次世代へのアプローチ(Society 5.0)で目指すものとは


分科会D
異文化対話を促進するには


懇親会(11月30日)

11月30日夕刻には、信州大学の会場にて懇親会が行われました。
地元信州の料理と角田賢次信州大学国際部長の軽妙な司会により、懇親会は終始和やかに進みました。
余興では信州大学交響楽団カルテットにより日本の楽曲が演奏され、会場は一層盛り上がりました。
日露双方の参加者は、フォーラムでの真剣な議論に続き、懇親会の打ち解けた雰囲気の中で友情を一層深めることができました。


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閉会式(12月1日)

田中清信州大学副学長より日露参加者に修了証が授与されました。


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また、全日程を通し、信州大学の皆様のご協力のもと、本フォーラムは準備から当日の運営まで大きな事故もなく、円滑に進めることが出来ました。心より感謝申し上げます。
閉会式の後、日露参加者はグループに分かれて松本市内と奥飛騨の散策へ出発しました。翌日はロシア人参加者のみで高山市内を散策し、日本の伝統的な側面に触れました。


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参加者の声

素晴らしい印象を受けましたし、ここでしか出来ない経験が出来ました。運営に携わった方々と、私の夢を叶えてくれた全ての参加者の皆さんに対して心から感謝を表したいと思います。きっとみんな今回の訪日を一生忘れないと思います!!!(ロシア人参加者)

お互い学校も生まれた環境も学んでいることも全く違う学生たちとフォーラムの成功という一つの目標に向かって、試行錯誤できたことは大変刺激になった。日本の友人と共に、ロシア人に日本のゲームを教えたり、お寿司のルールを伝えたりした経験は他ではできない大変貴重なものであった。今回四日間という限られた時間ではあったが、その中で多くの素晴らしい友人ができたことは、私の今後の人生の大きな糧となると確信しています。(日本人参加者)



●日露青年交流センター後記

本フォーラムの実施にあたりご協力いただいた外務省、国立大学法人信州大学、ロシア技術大学青年政策・国際関係局の関係者、並びに日露両国青年の参加者に心より御礼申し上げます。
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