-ロシアの教室から-

「再びアジアとロシアをつなぐ折衝地となった街、ウラジオストク」 (極東連邦大学 東康太教師)

「日本から一番近いヨーロッパ」と謳われるウラジオストク。実際に東京から飛行機で約2時間で行ける近さで近年脚光を浴びています。
しかし、ご存じの通り、ウラジオストクはその史実の中でアジアとロシアの思惑が交錯する重要な拠点でありつづけてきました。

観光や市内の案内については既に素晴らしいWEBサイトやブログがたくさんありますのでそちらにお譲りすることにして、今回はこの街で日本や日本語教育がどのように受け入れられているのかに焦点を当ててお伝えしたいと思います。

ウラジオストクと日本語教育のかかわり


▲開設当時の東洋学院


ウラジオストクでは今から120年前、1899年に「東洋学院」が開設され、日本語をはじめ中国語、韓国語、満州語、モンゴル語といった東洋言語を学ぶ専門機関として出発しました。
東アジアが国際社会において重要な地域となりつつある中、この地にロシア随一の東洋学の専門機関が置かれたことは至極当然のことと言えるでしょう。

東洋学院では語学はもちろんのこと、当時としては極東地方唯一のスポーツ複合施設が建設されたこともあり、日露戦争間近の時期でありながら日本の柔術を専門的に学べるなど、文化・スポーツの分野にも力を入れる先進的な教育機関でありました。

ソ連時代の1958年、ウラジオストクは閉鎖都市となり、外国人だけでなく他都市に住むソ連市民さえも立ち入ることのできない街となりました。
日本総領事館は隣町(といっても100km以上離れていますが)のナホトカに移転し、貿易もナホトカと行われていましたが、日本語そして日本学の教育はウラジオストクで続けられ、ソ連全土で活躍する人材を輩出しつづけました。

ソ連崩壊後は再び外国人の立ち入りが認められ、日本からの貿易船も再びウラジオストクへ入港するようになりました。
ウラジオストクだけでなく極東に住むロシア人は日本製品の品質の良さや日本人の気質を高く評価しており、昔から非常に親日感情が強い地域です。
ソ連崩壊後の経済・社会が不安定な時期において日本との貿易は貴重な仕事であり、2000年前後には空前の「日本語学習ブーム」が訪れ、東洋学院の流れを汲む極東国立大学だけでなく市内のほかの大学や語学学校で盛んに日本語が学ばれるようになりました。



現在のウラジオストクと日本語教育

「日本語ブーム」から20年経ちましたが、ウラジオストクには引き続き親日的な雰囲気が漂っています。
2018年には日本国民を対象に簡略化された電子ビザでのロシア入国が可能となり、ウラジオストクを含む極東の諸都市に簡単にアクセスできるようになりました。
実際に、日本人観光客の数は堅調に伸びています。
市内では、3つの大学、そして10校近くの中学校・高校でも日本語が学ばれています。
ウラジオストク日本センターでも社会人向けの日本語講座が開講されており、毎年多くの市民が日本語を学んでいます。

さて、筆者が在籍する極東連邦大学(旧極東国立大学)では200人以上の学生が専門言語として、約100名が第二外国語として日本語を勉強しています。
日本学科の教師の数も20名を超えていて、ロシア国内でも最大級の規模です。
近年では新しい動きが見られます。これまでは極東地域出身――つまり地元の学生が多かったのですが、ここ数年でモスクワやサンクトペテルブルク、クラスノダールといった他地域からの入学者が一気に増えました。
地元出身者は10~15%程度しかいません。遠方から来た学生たちにそのワケを聞くと、「地理的に近いことは心理的にも大切なこと」「日本だけでなく中国や韓国などアジア太平洋地域との結びつきが強いから」「日本との関係がさらに強まっているから、これからチャンスがありそう」といった、前向きかつ未来志向の意見が聞かれました。

2020年の2~3月にかけて、日本国内の航空会社2社がウラジオストクへの直行便を就航させ、今後も日本からの観光客は増加していくと見込まれています。
そうなれば、日本語人材の需要はさらに高まっていくでしょう。これは非常にラッキーなことであり、このような街はロシアでは多くありません。
実際に多くの学生たちがすでにアルバイトとして観光ガイドや案内文の翻訳等をしていますが、これからは更にプロフェッショナルかつ日本人のメンタリティを理解できる人材が求められることになります。
その需要に応えられるよう、そしてウラジオストクで日本語を学ぶ学生たちがより充実した学びを受けられるよう、当地での活動を工夫していきたいです。


▲極東連邦大学日本学科の学生たちとともに



ウラジオストクの所在地

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