-ロシアの教室から-

「絆を感じながら」 (ロシアキリスト教人文アカデミー 内田萌教師)
2020年10月19日

『豪華絢爛』『北のヴェネツィア』と称される、美しい街・サンクトペテルブルク。
この街には、日本語を学ぶことができる高等教育機関や私塾が数多くあり、また日本関連イベントも定期的に開催されていたりと、日本への関心の高さが窺えます。
ここでは、赴任大学であるロシアキリスト教人文アカデミーと、現地の様子についてご報告します。


写真1:アカデミーは、市内中心を流れるフォンタンカ川沿いにある。

ロシアキリスト教人文アカデミーは、サンクトペテルブルクで最古の私立大学として、1989年に開校し、1993年に日本語学科が設立されました。
私は今年度で2年目ですので、ロシアの生活に少しずつ慣れてきましたが、ロシアに来て驚いたことがいくつかあります。
それは、日本と違って、ロシアの大学側が時間割を決めるということです。また、ほとんどの授業でたくさんの宿題とレポートが出されます。
よって学生達は全ての授業を共にするので、いつも苦楽を分かち合い、4年間を通して特別な〝絆〟が築かれます。


写真2・3:教室の様子(2019年11月撮影)。大学名に『キリスト教』とあるとおり、宗教画が四方に飾られている。
(写真をクリックすると拡大表示されます。)

昨今の新型コロナウイルス情勢の影響で、今年3月下旬からオンラインにて授業を行っていましたが、この9月からは対面式授業が再開しました。
マスクの着用、検温、そして手の消毒を経て、大学構内に入ります。半年ぶりに会った学生達はみな元気いっぱいで、そして少し大人っぽくなった印象でした。
お茶の代わりにお味噌汁を嗜む学生、私の授業には漢字が書かれたTシャツを着てくる学生、休憩時間に廊下で剣道の素振りをする学生、日本製のノートに丁寧に漢字を練習する学生…。
それぞれの方法で『日本』を楽しんでいる様子は、コロナ前と変わっていません。また、教室で学べることに感謝の気持ちを持つようになった、という学生も多く見受けられました。
対面式授業に戻ってから、全学年の出席率や宿題提出率、また授業への積極性などは、前年と比べて著しく上がったように感じています。

そこで今年度から、各々のコメントシートに今年の目標カードを貼り、授業のたびに目を通すようにしてもらっています。
日本語を学ぶ意味を定期的に意識させ、学生達のモチベーションを上げることが狙いです。
それではここで、日本語を専門に学ぶアカデミー3年生の目標をご紹介します。

● 日本語能力試験N1に挑戦したいです。そのために、常用漢字や語彙の特徴や表現をたくさん覚えて、聴解と文法を練習します。
また、日本語をもっと丁寧に、そして論理的に話せるようになりたいです。
(カーチャ)

● 日本語能力試験N2に合格したいです。日本語での会話にもっと自信を付けたいです。(ターニャ)

● 日本語のレベルを上げるために、日本語の会話と読解と書く練習をたくさんしたいです。そして、日本語の敬語と日常会話がもっと分かるようになりたいです。(クシューシャ)

● 日本語能力試験N3に合格したいです。大好きな剣道の練習も頑張ります。(アエリータ)


写真4:アカデミー2年生のコメントシートと目標カード。「日本語能力試験合格」を掲げる学生が多い。

ロシアキリスト教人文アカデミーでは、授業で学んだ日本語を授業外の場で使って、初めて本当の日本語力が身に付く、という趣旨のもと、青年交流活動も精力的に行っています。
日本語会話クラブ『絆』は日本人留学生を招いて週に一度ほど、そして日本文化紹介をテーマとした交流イベントも月に一度のペースで開催しています。
現在は、コロナ情勢もあってなかなか実施が難しいですが、できる範囲での日露交流の形を模索していこうと思います。


写真5:会話クラブ『絆』の様子(2019年12月撮影)。本学の学生が主体となって運営している。


写真6:交流イベントでは、地元の子供達を招いて、本学の学生達と日本人留学生と一緒に日本の遊びを紹介した(2020年1月撮影)。
写真の福笑いの他に、けん玉、折り紙、あやとり、書道体験など。

このように、ロシアキリスト教人文アカデミーの学生達は、今日も明るく勉学に励んでいます。
このコロナ禍で今後どうなるか分かりませんが、ここにある〝絆〟を感じながら、彼らと共に成長していきたいと思います。
さぁ、ロシアの新年度は始まったばかり!

サンクトペテルブルクの所在地

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