-ロシアの教室から-

Flipgridを用いた日露オンライン相互学習の試み(極東連邦大学 東康太教師)
2021年4月

交流会実施にあたって

2020年春から始まったコロナ禍の影響で、世界中の教育機関では対面での交流活動が大きく制限されました。その逆風の中でも多くの教育現場で遠隔教育のメリットが見出され、今では世界中で国や言語の壁を超えたオンライン交流がさかんに行われています。
 オンライン交流と聞くと、リアルタイムで相手とつなぐ合同授業や会話クラブを想起される方が多いと思います。学習言語の母語話者と直接やりとりができ、既習の語彙や文法を使って質問をし、瞬時に答えが返ってくる機会は、コロナ禍がもたらした数少ないメリットの一つでしょう。しかし、リアルタイムの交流は決して万能とは言えません。ここでは、ビデオコミュニケーションサービス「Flipgrid」を使った日露の大学間交流についてご報告します。



交流の概要

 「Flipgrid」は、非公開のグループを作り、投稿のテーマ(トピックと呼ばれます)を教師が設定して、その中で学生がビデオを作成・投稿。それに対し、別の学生がビデオで返信をするサービスです。上記のビデオでは日本人もロシア人も日本語で話していますが、違うトピックではロシア語だけだったり、自分の母国語で話すようにしたりと、色々な工夫ができます。

 リアルタイムの交流では開催時間の設定がむずかしく、両サイドの学生が全員参加できるよう調整するのは非常に手間がかかります。時差があればなおさらです。Flipgridなら、投稿期間を設定しておけば学生は好きな時間にビデオを作れます。しかも、何度も撮り直しができますし、相手からの返信も何度も聞くことができます。このように、会話の練習でありながら、しっかりとした準備、ネイティブの発話の分析ができることがこのサービスの大きな強みです。

 極東連邦大学では日本学科3年生の学生約60人を対象に、前期は関西大学の学生と、後期は大阪大学の学生と交流を行いました。それぞれの概要は下記のとおりです。

【前期: 極東連邦大学日本学科3年生、関西大学1~2年生(第2外国語ロシア語)】
・一人ずつトピックのテーマに沿ったビデオを作成し、投稿。ビデオ内の質問や気付いたことに対して、相手側の学生がビデオで返信を送る。質問を何往復続けてもOK。
・テーマは「自己紹介」「大学紹介」「My今年の漢字」「日本とロシアの新年」など。
・学習進度に大きな差があるため、日本側は基本的に授業での既習事項を使ってみることを活動の中心に据え、ロシア側は大きな制限を作らず自由な発話に挑戦するよう伝えた。
・学期末に1度だけリアルタイムでのオンライン交流を実施した。

【後期: 極東連邦大学日本学科3年生、大阪大学外国語学部ロシア語専攻3~4年生】
・複数人でトピックのテーマに沿った「雑談」を行い、ビデオを撮る。
・相手側も全く同じテーマで雑談を撮影し、アップロードする。
・両者とも相手のビデオを見て、シチュエーションの中で適切な語彙や活用できるフレーズ、そして会話独特の表現を分析し、より自然な発話ができるよう考える。
・分析後、今度は自分の学習言語でもう一度雑談を行って、ビデオを投稿。2回目の動画もお互いに確認して、気付いたことをビデオでフィードバックし合う(言語は任意)。
・学期中盤に2回リアルタイムでのオンライン交流を実施した。

交流の様子

 前期は一人ずつが映像も含めてビデオを作成していたので、最初は日露双方とも苦戦していました。しかし後半になるにつれて自由な発想で映像を作り、ときには教室を飛び出して大学やまちなか、友人なども撮影し、言語学習としてだけでなくお互いの文化を自国にいながらにして知る魅力的な機会となりました。
 後期はテーマに沿ったネイティブの自然な会話を聞いてすぐにそれを使って実践できること、そして教科書では学びにくい間投表現も豊富に得られることから、日露どちらの学生にとっても新鮮な学ぶの機会となりました。また、活動の合間にリアルタイムの交流を設けることで、学んだ表現が実践できただけでなく、活動の相手と仲良くなることでその後のビデオ作りのモチベーション向上にもつながりました。

参加者の声

 Flipgridの活動が大好きです!特に、日本人の学生とお互いに返事をすることやフィードバックです。自分のミスなどがすぐわかります。そして、日本人同士の自然な会話を聞きながら、沢山の会話シチュエーションや言葉、文法などよく覚えられます。
 Flipgridというのはグループでも活動できますから、友達と一緒にビデオを撮ることができます。これもすごく楽しかったです!


極東連邦大学 日本学科3年生 ボベル・エヴゲーニーさん


 最初はFlipgridの使い方になれず、投稿を間違えたりしてしまいましたが、なれると簡単で編集も手早くできて、なおかつ投稿しやすいので、相互対話のコミュニケーションツールとしては向いているのではないかと思いました。
 コミュニケーションに関しては、やはり「生のコミュニケーション」というのが大きなポイントだったと思います。細かいミスなどご愛嬌と言った感じで、みんなミスなど気にせずどんどん投稿していっていたのが印象的でした。
ロシアの学生さんが日本語を使えたので、基本的には日本語で会話していましたが、やはりそのように話していたとしても、文化の違いなどが滲み出てきていて面白かったです。
また、ロシアの学生さんはビデオ1本にしても様々なアングルや工夫を取り入れていて、とてもクリエイティブだと感じました。「ロシアと繋がる」ということが最も感じられるイベントであったと思います。


関西大学法学部2年生 宮田 恒太さん

総括

初めての試みでしたが、言語学習としてだけではなく、ビデオ交流を通してお互いの文化や考え方、メンタリティーを楽しみながら学ぶことができました。Flipgridは柔軟性の高いサービスですので、授業の形式や実施の目的に合わせた使い方ができると思います。興味を持たれた先生方は、ぜひ活用してみてください。
また、この活動の実施に際しては、カウンターパートであった関西大学・大阪大学の非常勤講師の北岡千夏先生、関西大学のジュマグーロヴァ・アイヌーラ先生に多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

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