日露修好150周年記念回航事業 【参加者の声】

一橋大学社会学部社会学科3年
丸末 紗代

私たち一橋観世会は52年の歴史を持つ演能サークルです。この度は日本文化としての能を紹介すべく、この事業に参加させていただきました。ウラジオストクの極東大学では、舞・謡・囃子を絶妙に融合させ抽象を追及した簡素な描写で幽玄の美を表現する能の世界をご紹介すると共に、日本が世界に誇る西陣織の能装束や金細工の小物などの伝統工芸美術品を舞台上にご覧いただきました。また船上プログラムでは、ロシアの学生の皆さんに実際に舞や謡、鼓などの楽器を体験してもらい、能の魅力をより身近に感じてもらえるようにしました。

一般によく言われることではありますが、海外に行くといつも普段以上に自分が「日本人」であることを意識させられます。そして私は今回能を伝える立場として、そしてひとりの大学生として日露の学生と交流していった中で痛切に感じたことがあります。それは、日露間の「国際交流」という場で、日本人があまりに自身の日本文化について知らないこと。それに対して、ロシアで日本語や日本文化を学ぶ学生が驚くほど日本文化のことをよく学んでいたことです。私たちがロシアの伝統舞踊や民族音楽のパフォーマンスを見せていただいたとき、ロシア人学生たちが横から色々と解説をしてくれました。でもこれがもし逆の立場だったら、私たちは同じことができるでしょうか。相手を知ろうとするとき、自分のことも同じくらいよく知った上で相手にそれを伝えることができること。真の国際交流はそこから始まるのではないでしょうか。

また、日露間の外交的な様々な問題も避けて通ることはできません。この事業で学生のスピーチなどを聞きながら、相互理解と利害調整の難しさとそこへ敢えて挑戦することへのエネルギーを感じました。このエネルギーが未来を拓いていくのでしょうか。今の私にはまだ彼らのようにここに働きかけられるような大きな力はありません。まずロシア語を学ぶというスタート地点に立つことから始めなければなりません。

でも、今日も私はこの事業で知り合ったロシアの友人に日本語と英語のちゃんぽんでメールを書いています。そしてこんな小さな「国際交流」もちょっと素敵ではないでしょうか。