日露青年招聘・派遣事業

日露アニメ・オタク文化学生サミット
実施報告書

神戸学院大学 横岡杏奈

~いざロシアへ~

■ 9月2日

海外へ行くのは今回の訪露が初めてであり、もちろん国際線も初めてなので、とても不安で、しかし少しワクワクした気持ちで出発しました。モスクワの入国審査ではすごくぞんざいに扱われ、しかしそれすら「新鮮だ!」と異国の雰囲気に興奮していました。空港ではロシア側の講師であるサーシャさんが迎えに来てくださっていました。岡部先生から聞いていた通り、とても愉快な方で安心しました。外へ出ると日本では絶対にお目にかかれないような超高層ビルや広大な大地が広がっていました。この高層ビルは地震が来たらひとたまりもないな・・・と真っ先に考えたところはさすが、私も日本人だなと実感しました。やはりロシアというと極寒をイメージしていたので、なんだ、思ったより寒くないな、と思っていました。この時は、ですが。


モスクワ大学に無事到着し、車を降りて見てみると、そのあまりの大きさと壮大な雰囲気に圧倒されました。これは、と寮への期待値が高まってしまいました。いざ寮へ行こうとすると、サーシャさんがしきりに「あまり綺麗なところではない」というようなことを言っていたので少々不審に思いながら部屋に入り、なるほど、と思いました。日本とは違い土足なので床が砂やホコリでまみれており、なぜか2枚置かれた毛布。掛け布団はないの!?と隣の友達の部屋に行くとしっかりと掛け布団が用意されていました。強奪するわけにもいかないのでいそいそと部屋に戻りました。砂とホコリは「自分で掃除してくれ」と言わんばかりに置かれてあったほうきで最低限掃除しました。風呂に入ると、先住の方の髪の毛が詰まっているのかほとんど流れず、風呂場周りは洪水状態でした。想像していた何倍もひどい、私はここで今日から約一週間程度も暮らしていけるのだろうか・・・などとすごく不安になりました。やはり日本という国はとても整備されたホスピタリティに溢れた素晴らしい国なのだと実感しました。しかし今まで体験したことのないことの連続で、この時少しの高揚感があったのも事実です。

■ 9月3日

この日は午前中、日本大使館を訪問しました。アニメサミットのロシア側の参加者には日本大使館で初顔合わせということで、どんな学生たちが参加するのかワクワクしていました。いざ会ってみると美女、美女、美女。さすがロシア人、綺麗な方ばかりで圧倒されました。

無事にロシア側とも合流したところで、この日はモスクワ大学から既に着ていた「コスプレ姿」で大使館に訪問しました。コスプレで大使館訪問など非常に貴重な経験なので、オタクとしては鼻が高いです。

その後、モスクワ大学心理学部のキャンパスに移動しました。キャンパスのすぐそばに赤の広場やクレムリンなど、テレビや教科書などでよく見るものが立ち並んでいました。セッションを始める前に昼食として学食を食べたのですが、ここで食べたそばの実の料理がとても飲み込めないほどの味で、食文化の違いに愕然としました。昼食を終え、セッションの準備が始まりましたが、この段階でもあまりまだ日ロの学生が打ち解けておらず、「お互いに仲良くしたいがいまひとつ踏ん切りがつかない」という空気が漂っていました。しかし、セッションをはじめると、私のロシア語での挨拶にとても良い反応をしてくれて、土岐くんのプレゼンでも質問が絶えないほど盛り上がり、だんだんと緊張が解けてきました。その後、「少年漫画」「進撃の巨人」(←ロシアで大人気の作品のため)「その他オールジャンル」という3つのグループに分け、ディスカッションを行いました。


私はどこにでも入れたので、最後まで空きがあった進撃の巨人のグループとしてディスカッションに参加しました。進撃の巨人は、日本ではもちろん、国外でも高い人気を誇る作品で、ロシアでも例に漏れず人気度の高い作品です。それゆえ、ロシア側の学生はとても熱心に語っており、「もしあまり詳しくなかったらどうしよう」という私の心配は杞憂に終わりました。日本では進撃の巨人は、アニメーションのクオリティの高さが非常に好評で、それにより爆発的に人気が出た作品であったのですが、ロシアの学生はアニメはもちろん、漫画もしっかり読んでいて驚きました。好きなキャラクターを聞いたところ、日本でも一番人気の高い、人類最強の「リヴァイ」というキャラクターがダントツの一番人気でした。リヴァイが大好きだ、ととても興奮しながら話してくれました。

かっこいいと思うキャラ・人気のキャラは日本もロシアも同じなのだ、と嬉しくなりました。アニメのオープニングを一緒に歌ったり、私が偶然持ってきていた進撃の巨人のクリアファイルをプレゼントしたりして、とても盛り上がりました。初めは進撃の巨人の話だけをしていたのですが、熱が収まりきらなくなって途中からは他のアニメの話もたくさんしました。後から聞くと少年漫画チームとオールジャンルチームもとても盛り上がったようで、グループに分かれてのディスカッションは大成功に終わりました。ただ、個人的にはこの時間が一番盛り上がり、終了を告げられたとき、時間が足りない、まだまだ語り足りない、と思ったのでもう少しディスカッションの時間を多く取ればよかったです。



その後、屋上へ移動して歓談しました。最初は緊張でお互いあまり喋れていませんでしたが、この時には皆驚くほど積極的に話していました。ロシア側の学生には日本語がしゃべれる人がたくさんいたので意思の疎通も十分に取れました。

このあと、ロシアの学生に案内してもらい、街で夕食をとることになり、この日はうどん屋「丸亀製麺」に連れて行ってもらいました。私は香川県出身でうどんの事となるとうるさいのですが、ロシアのうどんはびっくりするほど太くて硬かったです。うどん屋さんにケーキが置いてあるのには驚きました。日本製の飲み物も置いてありました。ロシアの学生がお箸をとても上手に使っているのには驚愕しました。アニメを通じてこのような日本の文化にも興味を示してくれるのはとても嬉しいことだと感じました。



■ 9月4日

この日はとても立派な教室を用意してくださっていたので、そこでアニメを愛するいろいろな方々がプレゼンテーション形式でそれぞれ発表しました。この日はスーツで参加とのことだったのですが、コスプレが想像以上に好評だったこともありコスプレでの参加となりました。会が始まる前に副リーダーである久保さんが三線でロシア国歌と日本国歌を歌いました。とても練習していた様子だったので私も少し緊張しながら見ていましたが、今まで何度か聞かせてもらった中では一番の出来だったように思います。

まず、久保さん、宇山さんがロシア語でプレゼンテーションをしました。内容はロシアのアニメの歴史に関するものでした。私のロシア語での短い挨拶とは違い、とても長い発表だったので、こちらも相当練習したのだと思います。

次に私が、現在の日本のアニメについて発表しました。こちらは日本語で、サーシャさんの通訳が入る形での発表となりました。日本での最近のアニメについて知りたい、または興味があるという方が多かったのか、質問もたくさんしてくれて、画像が表示されると、あっ!というようにざわつくなど、大きな手応えを感じました。後に「あなたのプレゼンはとても興味があります。とても良かったです。」と興奮気味にカタコトの日本語で一生懸命伝えてくれた方がいて、とても嬉しくなりました。


次にロシアの学生、サマラノーバさんが日本のアニメに登場するロシア人のキャラクターについて紹介しました。コスプレ、とまではいきませんがアニメ「黒子のバスケ」の秀徳高校のユニフォームに見立てたTシャツを着ての発表でした。日本のアニメには、私が知っているよりもっともっとたくさんのロシア人のキャラクターがいることがわかりました。

次に岡部先生が、日本のアニメ産業の課題について発表しました。いいところだけではなく問題点も挙げていて、私自身とても勉強になる発表でした。

ここで一旦休憩が入りました。日本側はアニメ専門店「アニメイト」で買ってきたお饅頭やチョコレート菓子を配りました。ロシア側もデザートをたくさん用意してくれていました。みんなでワイワイと美味しくいただきました。

休憩が終わったところで、ヴァレリー・コルネーエフさんがロシアでの日本のアニメの人気について発表しました。たくさんの資料を交えながらの発表で、ロシアで日本のアニメが広まる経緯がよくわかり、とても勉強になりました。

次にナターリア・ルクニフさんが日本の昔のアニメの重要性などについて発表しました。「あなたたちは手塚治虫の作品を見たことがあるか?そういう日本の昔のアニメにもっと目を向けるべきだ」と厳しい表情でおっしゃっていました。手塚治虫の作品は祖母の家にあり、幼い頃に読んだことがある程度だったので、もう少しちゃんと読んでみたいと思います。


次にイオリ・エンドウさんがコスプレ文化の素晴らしさについて発表しました。日ロ間ではコスプレに関する交流がたくさんあり、とても驚きました。ロシア人は肌が白くて美しく、背も高いので本当にコスプレ映えします。次にこのようなサミットがあれば是非、ロシアの学生たちにもコスプレをしてもらいたいです。

閉会にあたって、「図書館戦争」に登場する「図書館の自由に関する宣言」に見立てた、「日露アニメ愛好者共同宣言」が採択されました。これは事前に全く知らなかった話なので、本当に突然のことで驚きました。

その後、モスクワ大学の外で記念写真を撮影しました。これにてアニメサミットは閉幕となることもあり、学生たちは興奮冷めやらぬ状態でたくさんの写真を撮りました。

■ 9月5日

この日は一日市内視察をしました。ロシアの学生たちが案内してくれるということで、お言葉に甘えて案内してもらいました。この日はあいにくの雨でしたが、ロシアの学生たちが持っていた傘が日本にはない変わったもので、デザインも可愛く、その話で盛り上がりました。まず美術館へ行きました。その前にマクドナルドを発見したので「違いを確かめたい!食べてみよう」ということでマクドナルドを食べてみました。しかし日本のそれと味は変わらず、安心したような、物足りないような複雑な気持ちになりました。美術館は驚くほど大きく、全部見て回っていたら1日かかると言っていました。ほどほどの時間で美術館を出て、МУ МУというチェーン店で昼食をとることになりました。お肉は少し高かったけど美味しかったです。ボルシチやピロシキもとても美味しかったです。ただ、ピロシキは冷えて少し硬くなってしまっていたので、つぎは是非温かいものをいただきたいです。


この日は夜に赤の広場で行われるパレードを見学予定だったので、午前からロシア人学生と観光しながら少しずつ赤の広場に向かって歩いていました。夕方、岡部先生と合流し、ついにロシアの学生たちとの別れの時が来てしまいました。本当に名残惜しくて、いつまでも記念にと写真を撮っていました。とても寂しいですが、彼女たちと「必ずまた会おう」と約束を交わし、お別れをしました。

そしてパレードを見に行っているとイルミネーションで煌びやかにコーティングされた大きな建物たちや、小さな可愛らしいお店がいくつもあり、とても気分が高揚しました。途中、パレードに出る日本人の方々にも会い、外国に同じ日本人が居るという事実にお互いとても驚き、一気に意気投合して一緒に写真を撮りました。


いよいよパレードが始まりました。私は高校時に吹奏楽部でマーチング全国大会に出場した経験があり、パレードや楽器、音楽にはとても興味があるので、とても楽しみにしていました。いろいろな国がそれぞれその国らしさを出した素晴らしいパレードをしていて見入ってしまいました。日本はパレードではなく秋田の竿燈祭りをしていて、一際異彩を放っていました。先ほどお会いした際に祭りの格好をしていたのにもここで納得しました。

この日は昼過ぎまで雨が降っていたので今までよりすごく寒かったです。サーシャさんが先週秋になったばっかりと言っていたのですが、ロシアの初秋は恐ろしいほど寒かったです。寒いのが苦手な私は、冬にロシアに行くのは控えようと思いました。

■ 9月6日・7日

この日の午前中は、岡部先生と一緒にお土産を買いに行きました。この時点で一つもお土産を買っていない状態だったのでたっぷりとマトリョーシカを買いました。後に家族にマトリョーシカを渡すと母はとても喜んでいました。しかし祖母と祖父が「これは何?」といった状態で、この世代にはマトリョーシカはあまり知られていないのかも知れません。

無事に土産を買い終え、大学寮に荷物を取りに帰ってから空港に向かいました。最初は絶句していた寮ですが、気付けば順応していて、最後は離れるのが惜しかったです。とても素晴らしい思い出をくれた場所だと思います。出国審査の際も相も変わらずぞんざいに扱われ、ああ、この扱いももう最後なのだろうか、と少し名残惜しく感じつつ飛行機に乗り込みました。いろいろありましたが無事に帰ってくるとこができてひと安心しました。

~まとめ~

私は毎日暇があればアニメを見ているのですが、準備段階で、日本班のほかの学生達が「そこまで知識がないから向こうの学生にとって期待はずれだったらどうしよう」ととても心配がっていました。かくいう私も、私の生きている世界には私なんかよりもっとオタクな人がたくさんいるので、「なんだ、日本のオタクもこんなものか・・・」とがっかりさせてしまわないだろうかと少なからず不安がありました。しかし、ロシアを訪れて実際にロシアのオタクたちと語り合ってみると私の知識はコミュニケーションをとるにあたってとても役に立ちました。アニメオタクじゃなかったら、絶対にここまでコミュニケーションをとることは不可能でしたし、アニメのおかげで素晴らしい出会いをすることができました。


↑コスプレで学校を出たところ、アニメが好きな
モスクワ大学生に写真をお願いされました。

また、私を含む日本班は全員初コスプレでしたが、みんなとても楽しんでいたように思います。私自身、コスプレをするとその作品を知っている人が寄ってきて写真をお願いされたり、アニメについて話ができたりし、まるでそのキャラクターになれたような気持ちになりとても楽しかったです。もしかするとこれを機にコスプレにハマる人も出てくるかもしれません。

今回はロシア側の学生が日本語専攻ということで、ほとんどの人が日本語を喋れたのでそのおかげでとても助けられました。しかし、9月に大学に入学したばかりの子が一人いたのですが、その子とは頑張って英語で会話するしかありませんでした。伝えたいことや話したいことはたくさんあったのに、私のつたない英語ではほとんど伝えることができませんでした。これに非常にもやもやしました。


私は今まで「どうせ日本で暮らすのだから外国語なんて出来なくてもいいじゃないか」という考えだったのですが、やはり今回のように外国に出ることは何度かあるでしょう。また、日本でも外国の方に声をかけられたりすることもたまにですがあります。そういう時のために外国語は、特に英語ができるというのはとても重要な能力なのだということを今回身を持って感じさせられました。これからもっともっとグローバルな世の中になっていくと思うので、これを機に外国語を本気で勉強してみようと思いました。自分から外国語を学びたいと思うのはこれが初めてです。とてもいい刺激を受けたサミットになりました。

また、先程少し触れましたが、ロシアでは自分が客でも日本のように丁寧な扱いを受けたりしませんでした。また、寮も思っていた何倍も凄まじいものでした。しかし、ストレスでおかしくなりそうだと思っていたのは最初だけで、だんだんロシア人の性格も掴んできて、寮にもすぐに慣れました。日本に帰ってきても「あれを耐えられたのだから大概のことは耐えられる」と、強いメンタルを手に入れることができました。順応能力も高くなったかな、と感じます。

移動手段はほぼ地下鉄だったのですが、エスカレーターが驚くほど速く、なにかのアトラクションにでも乗っているかのような気分でした。また、電車のドアも大きな音を立てて勢いよく閉まり、仰天しました。他にも寮が掃除されていなかったり、シャワーの根っこが抜けて温泉が吹き出たかのように風呂中にお湯が飛び散ったり、お店ではぞんざいな扱いをされたり・・・日本では決して経験できないようなことをたくさん経験しました。いつも当たり前だと思って日本で生活していましたが、日本は思ったよりたくさんの優しさと気遣いに溢れた国だということにも気づくことができました。また、勝手なイメージで「ロシア人は冷たくて怖い」というふうに思っていましたが、全く逆で、ロシアで出会った人たちはみんな陽気で愉快な明るい方々ばかりでした。このアニメサミットだけで終わらず、是非また会いたいものです。

このように、今回のサミットではたくさんのことを学びました。考えが180度変わったのではと感じるほどですし、何よりグローバルな考えを積極的にできるようになりました。度胸もついたと思います。これほどまでにアニメオタクで良かったと感じたのはこれが初めてです。こんなにたくさんのものを私に与えてくれた、アニメ、アニメサミット、ロシア、モスクワ大学やその他のロシアでお会いした方々、準備をしてくださった日露青年交流センターの方々、岡部先生や日本班の仲間たち、その他関わっていただいた全ての方に感謝を申し上げたいです。

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