日露青年招聘・派遣事業

平成23年度 日露青年交流事業
「日露学生文化交流 日本人学生派遣プログラム」
2012年2月28日~3月6日

日本大学国際関係学部安元ゼミナールは、日露交流研究や日本文化を研究テーマに活動を続けています。毎年春休みに実施してきたロシア研修も8回目となり、今回は日露青年交流事 業「日露学生文化交流プログラム」として実施しました。ロシアでは一般的な小中高一貫教育 校訪問、大学訪問、ロシア人家庭訪問、学生との交流を通じて、異文化交流を体験してきました。


国立文化芸術大学のみなさんと

●在サンクトペテルブルグ日本国総領事館訪問

深夜の便でペテルブルクに到着し、翌朝、在サンクトペテルブルク日本国総領事館を訪問しました。総領事の川端様と副領事の松山様に、領事館の仕事の内容やサンクトペテルブルクの歴史、そして最新データを用いて様々な現況説明をしていただきました。また、2011年の東北大震災の際、地震が起きてから数時間とたたない間に、日本領事館の前に折鶴と花が添えられ、義援金が届けられたという話を聞いたときは、本当に嬉しく思い、胸が熱くなりました。

日本とロシアの繋がりとしては、約300年前、サンクトペテルブルクにロシアで最初の日本語学校が開設されて以来、日本語教育が行われているそうです。

在サンクトペテルブルク日本国総領事館前で

しかし日本とロシアの国民感情の温度差は大きく、ロシア国民は半数以上も日本に親しみを感じてくれているにもかかわらず、日本国民は大半がロシアに親しみを感じていないことがわかりました。これは日本とロシアにとって大きな問題です。その原因の一つは、日本の教育が関係しているのではないだろうかと考えました。日本人はロシアに対してあまり勉強することはないし、言語を学ぶ機会も少ない。学校の授業でロシアについて取り上げられることといえば北方領土かチェルノブイリ原発事故くらいで、ロシアのマイナス面ばかりを学んできたように思います。今後の日本ではロシアについてプラス面の教育もすべきだろうと強く感じました。

●国立文化芸術大学訪問(文化交流会)

長年お世話になっているリューバ先生の全面的なご協力により、25名程のロシア人学生が参加しました。例年、ロシア人学生の積極的な参加があり、充実した交流会となっています。初日だったこともあり、反省点が多々ありましたが、それを生かして、次はもっと良いものを作りたいと感じた一日目でした。うまく進行できない部分があっても、ロシア人学生たちは、暖かい拍手を送って応援してくれました。

自分で点てたお茶の味は?

いろはかるたに挑戦!

「ロシアからの船~プチャーチンと伊豆の人々」



ロシア人学生による俳句の暗誦

日本側からの日本文化紹介は、「ロシアからの船~プチャーチンと伊豆の人々」という日露合同劇と、いろはかるた、茶道、しりとり、ダンス、歌。合同劇ではロシア人学生と練習する機会が全くなかったので不安でしたが、ロシア人学生のセリフの時には、手でセリフの出だしを合図するなどの工夫をして、何とかうまくいきました。

ロシア人学生は常に日本語を使って交流してくれました。スピーチは「文化交流は自国の文化への関心も深める有意義なもの」という主旨で、日本人の演じたソーラン節を見て、ロシアの猟師の歌や踊りを知らないのでそのことについて関心を持ち、調べてみようと思ったという内容であり、交流会の原点である、互いの考えを知るということを思い起こさせてくれたすばらしい内容でした。

また、音楽に合わせて日本の俳句を暗誦してくれるなど、参考になる点が多い交流会となりました。

交流会後に連絡先を交換することができ、一過性のものではない、これからも続く“関係”を築くことができたことをうれしく思いました。


●サンクトペテルブルグ583番学校訪問(文化交流会)

学生交流としては2つ目となる学校でした。日本語を勉強している小学校から高校までの生徒達が学んでいます。学内には「ようこそ」や「いただきます」などの日本語もあり、すれ違うたびに学生が日本語で挨拶をしてくれました。生徒たちは日本語が皆とても上手で、コミュニケーションがスムーズでした。また校内の案内をしてくれるなど、心のこもった温かさにあふれた良い交流会になりました。まだ中学生や高校生なのに、日本語で積極的に話しかけてくる生徒たちに感心し、日本の代表であることを意識させられ、逆に刺激を受けました。

プログラムは、彼らに合わせて、準備体操や玉入れなどの日本らしい競技も取り入れた運動会など、体を動かす内容にしました。「マルモリダンス」を皆必死に踊ってくれました。十分日本語が分からない生徒もいて、伝えることのむずかしさを実感しましたが、体を使ったコミュニケーションはとても効果的で、楽しく交流ができたと思います。恒例の折紙も、今回は兜の制作にするなど工夫しました。


ロシア側からは、4年生の生徒たちがロシア民話を題材にしたミュージカルを披露してくれ、自国の文化を愛する教育の大切さを改めて感じさせられました。小学生の日本語授業では「ふるさと」を日本語で朗読してくれました。


ロシア民話のミュージカル 

「ふるさと」の朗読


●「世界の中の日本文化」 空手の稽古見学・インタビュー

プレンコフ先生と通訳してくれたチョーマ君

安元ゼミでは、日本文化に興味をもつ外国の人たちに向けて、大学生の視点で日本文化を紹介する雑誌「いろはにっぽん」を日本語と英語で発行しています。今年度は「世界の中の日本文化」の視点を取り入れ、空手の稽古を見学し取材しました。何よりもロシア人師範の「生活のすべてが空手」「大事なものは心」といった言葉は、日本人以上に日本武道への真剣さがこもっていて、日本武道がこのような形でロシア、そして世界に根付いていることに衝撃を受けました。



現代の日本社会に欠けている、きつくても正座で待つ「我慢」、先生にはもちろん、練習相手に対して尊敬する気持を持つこと、日本語の「はじめ」や「やめ」、「礼」などの挨拶、全てを日本文化の一つとして、自然にかつ一生懸命練習していました。特に小学生くらいの子供たちがとても真剣に取り組んでいたのが印象的でした。空手がどれだけロシアで浸透しているかを実感しただけでなく、自国の文化を見つめ直すきっかけになりました。


●国立サンクトペテルブルグ大学訪問
★文化交流会

交流会の内容は他校の訪問とほぼ同じでしたが、日露交流の原点を芝居にした「ロシアからの船~プチャーチンと伊豆の人々~」では、ロシア人役のロシア人学生がロシア語のセリフをすべて日本語で覚えていて、日本語能力の高さに驚きました。合同練習ができなかったにも関わらず、両国の学生が協力して一つのものを作り上げる感激を味わいました。


★意見交換会(「原発はいる?いらない?」)

ロシア側はチェルノブイリの事故があったにも関わらず、原発容認派が多いのに驚きました。節電をはじめ、環境問題に対する意識が低いことにも驚きました。

★日本語の授業参加

ロシア人学生の勤勉さ、そして自分たちの日本語や日本についての知識のなさを痛感しました。日本語は難しいけれど、とても面白いと話す姿が印象的でした。ロシアの日本語教育について知る良い機会となりました。

●ロシア人学生のお宅訪問

グループに分かれて、4軒のお宅を訪問しました。お母さんの手料理で迎えてもらい、ロシア人の日常生活を垣間見ることができました。






●「世界で活躍する日本人」川口悠子選手へのインタビュー

「いろはにっぽん」の取材を兼ねて、世界の中で活躍する日本人にお話を伺い、日本、そして日本人について考える機会にしたいと思い企画しました。

川口さんは、日本とロシアの文化的特色、ロシアでの生活の困難さとロシアスケートの素晴らしさ、そして、ロシアと日本の架け橋になりたいという抱負も語ってくれました。現役の世界で活躍するアスリートの生の声を聞き、国際社会で生きるその姿を目の当たりにできたことは、私たちの日本観や世界観にとって貴重な体験となりました。

●日露学生文化交流を終えて

安元ゼミの学生は、カリキュラムの関係からロシア語を履修することができないため、交流は日本語が中心にならざるを得ません。そのため交流する対象は、日本語を学ぶ学生です。それでも意思疎通を図り、ロシアの文化を知り、日本の文化をより理解してもらおうと、ロシア語劇「ドラえもん」にも挑戦しました。相手の好意に甘えた一方通行の交流ではいけないと気付き、対等な立場で交流をしたいと真剣に考え、ロシア語学習に取り組む学生も出てきました。そして、日露関係について真剣に研究しようという者や、領事館訪問を機会に外務省の日露外交の現場で働きたいと希望する学生も出てきました。ロシア研修は、こうした学生たちの意識の変化を導き出してきました。ステレオタイプのロシアイメージを壊し、ロシアへの親近感を感じることはもちろんのこと、自分がいかに日本文化に無知であるかに気付き、国際社会の中の日本や日本人について考える機会をロシア研修は与えてくれています。

ゼミ研修は今回で8回目になり、研修に参加してロシアで文化交流を行った学生数は100名を超えました。このゼミ研修で一人一人が日露関係に思いをはせ、真剣に考えるようになれば、それはその周囲にも影響を与えるはずであり、この小さな積み重ねが、必ず日本とロシアの為になることを信じて、これからも続けていきたいと思います。

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