日露青年招聘・派遣事業

平成23年度日露青年交流事業
若手剣道家グループ派遣プログラム
12月9日-12月14日


日露青年交流センターは、ロシア青年問題局からの要望を受け、若手剣道家グループを派遣しました。今回は、角正武名誉教授(剣道範士八段)率いる福岡教育大学剣道部代表団16名がロシアを訪問しました。 ロシア剣道連盟の協力もあり、モスクワ武道館に老若男女100名を超える剣道家たちが集結し、3日間にわたり交流試合で竹刀を交えました。

日本語教育に取り組む高校訪問では、日本語を学ぶ生徒の皆さんに剣道を紹介したり、日本語でコミュニケーションを取るなど、交流に努めました。

今回のプログラムはロシア剣道連盟、モスクワ武道館、第1555番モスクワ国立言語高等学校の協力を得て、実現しました。


●主な派遣日程

12月 9日    モスクワ到着

12月10日   剣道講習会および日露合同稽古

12月11日   角先生の講習会「剣道審判法について」

         日露青年剣道大会

12月12日   第1555番モスクワ国立言語高等学校訪問

         日露剣道合同稽古

12月13日   モスクワ市内見学後、日本へ






●参加者の活動レポート

初日(12月9日)

ついに待ちに待ったロシアへ出発しました。今回の参加者は、福岡教育大学剣道部員の多数の希望者の中から抽選で選ばれた17名です。角先生を除いた16名はロシアに行くのは初めてでした。

2日目(12月10日)

ロシアに到着して2日目、ロシアの方々との剣道交流会がありました。

道場に着き、気合を入れて中に入ると、大勢の人たちが大きな声で"おはようございます!!"と挨拶をしてくださいました。その誠実な姿勢と、人数の多さもさることながら、大人だけではなく、学生や小さな子どもまでいたことにも非常に驚きました。ロシア側と日本側、向かい合って正座し、角先生が講話をなさいました。角先生の講話は簡潔明瞭で、ロシアの方たちも聞き入っていて、時には笑いもありました。

その後、さっそく福岡教育大式の準備運動で稽古が始まりました。掛け声も、"一、二、三、四!!"と気迫あふれるもので、私たちも気合が入りました。面をつけて基本打ちの稽古が始まると、私たち学生が上座に立たせていただき、基本打ちを受けました。その一本一本が真剣で、私たちがアドバイスをすると、"はい、ありがとうございました。"と返してくださいました。自分の稽古に対する姿勢はどうだったか、剣道と真摯に向き合い、他者への感謝は持てていただろうかと、ロシアの方々の剣道に対する姿勢を見て感じました。このようにして午前中の稽古が終わり、私たち自身、むしろロシアの方々から教わったことのほうが多かったように思います。稽古後、ロシアの方々と様々な話をしました。言葉はわからなくても相手の表情やジェスチャーで読み取り、自然と笑顔で会話をすることができました。

午後の稽古は約2時間の間応じ技の稽古を行いました。人数がとても多かったので、一つの技を稽古できる回数が少なかったのですが、みんな一回一回の技の稽古を大切にして、全身全霊で技の稽古を行っていました。 その後、互角稽古を約1時間行いました。互角稽古では角先生、本多先生、竹内さん、学生が元に立って稽古をしました。ロシア人剣士と剣を交えるのは初めての経験で、ロシア人独特の攻め方やリズムに多少困惑しながらも、いい手本を示すことが出来るように、普段の稽古よりも身が引き締まる思いだったのを、今でも鮮明に覚えています。終了後には、稽古した相手とコミュニケーションをとり、英語やボディランゲージを駆使しながら、剣道に関するアドバイスをしました。その際も必死に理解し、少しでも強くなりたいという気持ちが伝わってきました。私も見習うべきことだと切に感じました。


3日目(12月11日)

3日目には、木刀による剣道基本技稽古法・審判講習会・日露青年剣道交流大会がありました。

初日の剣道交流稽古会でロシアの方々との交流を深めた私たちは、早くロシアの方々に会いたいという気持ちを胸にホテルを出ました。到着すると、昨日同様100人を超える剣道家の方々が武道場に駆けつけてくださっており、しっかりとした姿を見せなくてはならないという使命感が生まれました。中には、昨日友達になれた方もいれば、初めて見る方もおり、さらなる交流を期待することができました。

角先生のお話の後、稽古が始まりました。まずは木刀による剣道基本技稽古法についてご指導いただきました。5~6人組になり、私たちが元立ちに立ち、一緒になって1本目から9本目まで進めていきました。角先生による英語でのご指導に、ロシアの方々も熱心に応え、活気あふれる剣道基本技稽古法が展開されていきました。学生である私たちも、片言の英語やボディーランゲージで指導をしていくことは、剣道の指導の面においても、言語の勉強の面においても本当に良い経験になりました。また、私たちが曖昧になっている部分を逆にロシアの高段者の方々からご指導いただき、とても勉強になりました。


12時まで続いた木刀による剣道基本技稽古を終えると、角先生による審判講習会が行われました。審判講習会では、まず、剣道における有効打突の条件や基準、要因などの説明がありました。積極的に発問に答えていくロシア人の姿を見て、見習わなくてはならないと感じました。また、日本人以上に有効打突の条件を理解しており、私たちももっと勉強しなくてはならないと感じました。次に、角先生のご指導の下、私たち学生が試合を行い、実際にロシアの方々が審判に立ちました。審判員の立ち振る舞いや、審判員の在り方、判定の基準などを実際の審判活動の中で学んでいくことができ、とても充実していたとロシアの方々は話していました。


そして、14時から日露青年剣道交流大会が行われました。5対5の団体形式で行い、私たち学生が固定で、ロシアの各チームがローテーションをして、試合を進めていきました。審判はロシアの方が務め、自国に厳しくしたのか、あるいは日本に優しかったのか、若干日本人びいきであったようにも感じ、ロシアの相手の方には申し訳ない気持ちでした。しかし、試合の内容自体は非常に白熱しており、自国のチームが1本取ろうが、他国のチームが1本取ろうが、関係なく称賛の拍手が生まれ、本当に良い雰囲気で試合を進めることができました。そして、毎試合ごとに対戦相手と握手を交わし、互いを称える言葉を掛け合い、交流を深めることができ、本当にあたたかい気持ちになることができました。 このように、共通のものを通じて交流を深めることこそが、本当の意味での相互理解につながると確信することができました。

試合後は、休憩をはさみ、全員参加で地稽古を行いました。先ほど試合をした方やそうでない方と、様々な人と稽古をし、交流を深めることができました。真摯な態度で熱心にかかってきてくださるロシアの方々に感銘するとともに、本当に学ぶべきところがたくさんあると感じることができました。

稽古終了後、交流を深めた様々な人と写真撮影や連絡先の交換などを行いました。知り合うことができた方々と、今後も交流が続くことを願いながら道場を後にしました。


4日目(12月12日)

第1555番モスクワ国立言語高等学校訪問

日本語教育を取り入れている高校を訪問しました。学校はとても大きく、とてもおしゃれな造りでした。中に入ると先生方や生徒の皆さんに歓迎していただきました。日本語の上手さに皆驚きました。グループに分かれてのティータイムでは、身振り手振りで言葉の壁を越えて大いに賑わいました。 ロシアの生徒さんたちの日本に対する関心はとても高く、さまざまな日本文化について知っていました。一通りの学校案内が終わると、次はロシアの生徒さんたちのさまざまな出し物が披露されました。スライド発表や歌の発表、どれも上手な日本語が使われていました。

その後、今度は日本文化の紹介として、本多先生による剣道のレクチャーや角先生による書道の実演がありました。剣道のレクチャーではロシアの学生は食い入るように話を聞いているのが印象的でした。

短い時間でしたが、多くのロシア人学生と仲良くなることができ、楽しい時間を過ごしました。


      



在ロシア日本大使館訪問

語学学校に続いて、在ロシア日本国大使館を訪問し、公使参事官の方のお話を聞きました。現在の日露関係や、外交官の仕事の内容などについて詳しく話していただきました。中でも意外だったのはロシア人には日本や日本人のことが好きな人が多いということでした。日本とロシアの間には領土問題などがあり、ロシアに対してあまりいい印象を持っていませんでした。しかし、あまりいい印象を持っていないのは日本人だけであり、メディアの報道に惑わされすぎなのではないかと思いました。実際にロシアに対してよい印象を持っている日本人は少なく、約3割の人しかロシアのことをよく思っていないということでした。確かに日露には昔から抱えている問題が多々あります。しかしそれは政治上の問題であって、私たちがそのままの印象を鵜呑みにしてはいけないのだと痛感しました。ロシア人の日本に対する肯定的なイメージを片側通行にならぬように、日本人ももっとロシアについて知ろうとする必要があると思います。

大使館で過ごしたのはわずか1時間でしたが、とても内容が濃く、考え方が変わるものでした。


日露青年剣道家合同稽古

2日目からの稽古会も、今日が最後となりました。はじめは防具をつけずに、日本剣道形を行いました。有段の方になると1本目から7本目まで完璧に覚えていて、自分たちが戸惑ってしまうほどでした。日本語も英語もなかなか通じず伝え方に苦労しましたが、ジェスチャーを交えながら伝えると皆さん笑顔で答えてくれました。自分たちも多くのことを勉強させていただきました。その後防具をつけて1時間ほどの互角稽古を行いました。稽古最終日ということもあり、皆さん今まで以上に一生懸命稽古されていました。稽古後は全体で集合写真を撮りました。その後もあちらこちらで写真を撮ったり連絡先の交換をしたりしました。今回知り合った国を超えた剣友を今後も大切にしていきたいと思います。2日目から始まった計5回ほどの稽古も、あっという間に終わってしまいました。ロシアの方の稽古に対する取り組みや姿勢、学ぶことが本当に多いロシアでの稽古会でした。今度はぜひ福岡教育大学にも来ていただきたいです。

最終日(12月13-14日 火-水)

訪問最終日はモスクワ市内を視察しました。

今回の日露青年交流事業において剣道を通してロシア人剣道家の方々と交流を図ることができました。また語学学校訪問によって、剣道以外でも交流を図ることができました。さらに、 大使館訪問での日露関係、市内視察等によるロシアの文化及び生活様式を目の当たりにすることができました。この6日間は私たちにとって非常に貴重な体験となり、今後の自身の人生において強い影響を及ぼす一要因になると確信しています。このような貴重な体験を糧とし、それぞれ今後の生活に役立てていくことができるよう努めていきたいと思います。


●参加者の声

今回の交流事業に参加させていただけたことを大変感謝しています。5日間という限られた時間でしたが大変有意義な時間を過ごすことができました。先生から言われていた「日本を代表していく」ということはどのようなことなのかを出発まで考え、ロシアの方々に「日本人は素晴らしい人たちだ」と思っていただけるように、責任と自覚を持って行動しようと思っていました。今回の交流事業で私は改めて剣道の素晴らしさやロシアの方々の人柄の良さ、温かさに触れることができました。今回学んだことをただの思い出として残すのではなく、今後の人生で生かしていくことに意味があると思うので、これからもこの経験を生かして充実した日々を送っていきたいと思います。


ロシアの方々はとても優しく、また剣道に対して非常に真剣に取り組んでらっしゃって、私も見習わなければならないなと改めて感じました。

自分が今まで抱いていたロシアに対する考え方が変わったように思います。メディアで報道されるのは悪いところばかりで、良いところも報道してもらいたいと思いました。ロシアの方が日本をよく思っているなんて予想だにしていなかったのでとても驚きましたが、ロシアの一方通行の気持ちに終わらせるのではなく、それに気づく日本人の心も養わなければならないのかなと思います。


この事業に参加することができ、単身でロシアへ行っても出来ないような貴重な経験を多々させて頂いたことに,ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。ロシアの方々の剣道に対する気持ち、その姿勢からは、言葉の壁や国境を越えた何とも言い表せない素晴らしいものを肌で感じることができ、自分自身、剣道やこれからの人生について見つめなおすきっかけを頂いたような気がします。


今回のロシア青年交流は、本当に得るものが多く、率直に「是非また行きたい!」と思えるようなものでした。中でも最も印象に残ったものは、やはりロシアの剣道家の方々との交流稽古です。ロシアの方々の剣道に対する真摯な態度や熱心な姿を見て、多くの学ぶものがあると感じました。また、日本人への憧れも感じることができ、日本の剣道家としての自覚と責任を持って、私も修業していかなくてはならないと感じました。そして、このように剣道という共通のものを通して、数多くの方と深い意味での共通理解を果たす事ができ、かけがえのない友人を異国の地でも作ることができました。また、語学学校や大使館への訪問は初めてで、非常に貴重な体験をすることができたと思っています。語学学校では、あのように他国の方が日本に興味を持って勉強されているということを知り、嬉しく思いました。また、大使館でも、ロシアの方々は日本への憧れが強いというお話をお伺いし、大変驚きました。北方領土問題をはじめ、日露関係にはいくつか大きな壁が存在していると感じていた私は、ロシア人は日本人のことを良く思っていないだろうと感じていました。しかし、そうではなかったと知ることができ、私はロシアへのわだかまりのようなものは一切なくなり、むしろ好意的に見ることができるようになりました。私は数多くの人がこのような誤解をしていると感じます。そして、多くのロシア人は日本のことが嫌いでないという事実をもっと多くの人に知ってもらうことが、本当の意味での両国の親睦につながるのではないかと思います。




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