若手研究者等フェローシップ(2010)



森谷理紗
2010年9月

モスクワでは毎年7月から12月にかけて「日本の秋」という文化フェスティバルが行われます。この「日本の秋」では、日本の伝統芸能、ポップカルチャー、言語、経済、食文化等を紹介する様々な行事が行われます。私は今回縁あって国際交流基金事業の日本文化理解講義シリーズ「日本とは何かЧто такое Япония」の講師として「演歌・歌謡曲とロシアの歌」というテーマで90分のレクチャーを行いました。当日は雨にもかかわらず、会場には様々な年齢層の約40名の方が聴講に来ていました。


講義では、私の研究テーマである日本とロシアの音楽の文化作用を、大衆文化という視点から考える内容のもので、戦後、シベリア各地に抑留された日本人のうち、帰還後演歌・歌謡曲の作曲家として活躍した只野通泰氏が、自らの音楽のルーツをシベリアでの音楽体験であると以前のインタビューで言っていたことから、表面的には「日本的」、あるいは「ロシア的」な事物の典型とされているような物の中にさえ、日ロのつながりを見ることができるというお話をしました。

戦前のオッペケペー節から始まる演歌の歴史、そして歌謡曲の流れや現在の演歌の音楽的、音楽外的特徴を紹介し、只野氏のシベリアでの体験談やロシア民謡を日本語で歌い続けて60年の合唱団白樺の活動等についてを音や画像資料を交えて紹介していったのですが、講義の最後には様々な質問があり、日本の文化についての関心の高さを感じました。

今回の講義では音楽を専門としない一般のロシア方にむけて日本とロシアの音楽文化面での関わりを紹介するという貴重な経験をさせていただきました。これからも様々な場で研究して得たものを発信し、日ロの文化の橋渡しをしていきたいと考えています。


2010年10月

モスクワ音楽院で毎年9月から12月にかけて行われる「日本のこころ」フェスティバルは今年で12回目を迎えました。私も日本から来る邦楽演奏家の方々との連絡やプログラムの翻訳といった形でお手伝いをする機会もあり、いくつかの演奏家集団の方々と関わる中で、日本とロシアの音楽文化の交流の現場で色々発見することがあります。



  2010年10月13日
  モスクワ音楽院 ラフマニノフ・ホールにて
  邦楽21世紀の会と音楽院の邦楽アンサンブル
  「和音」

今回コンサートをモスクワとサンクトペテルブルグで行った「邦楽21世紀の会」は今年で10回目の参加となり、音楽院のロシア人による邦楽アンサンブル「和音」のメンバーと毎回何曲かは合同で演奏を行っています。また、他の日本の演奏家の中にも毎年コンサートをしにこの時期にモスクワを訪れるのですが、滞在中は筝、尺八、三味線等のマスタークラスもよく行われています。このようにして、ロシア人への日本の伝統音楽が伝えられており、一つの教育の場ともなっています。



さらに今年は、100年前に初めて三曲合奏の外国公演をモスクワで行った米川琴翁の孫である米川敏子氏が参加し、コンサートは非常に意義深いにものになったように思われました。音楽院のラフマニノフ・ホールには多くのロシア人がコンサートを聴きに訪れ、同じひとつの音楽空間を体験することで日本という異文化がロシアの人々の中に自己体験として浸透していっているのを目の当たりにできた非常に興味深い現場でした。