日露青年招聘・派遣事業

平成22年度招聘事業
ロシア国立高等経済大学ロシア人学生招聘プログラム


2009年に実施されたロシア国立高等経済大学への日本人学生派遣プログラムに続き、今年は同大学のロシア人学生を招聘しました。今回は昨年派遣プログラムにご協力いただいた京都大学と一橋大学に受入れ準備をお願いすることになりました。ロシア人学生のほとんどが世界経済・国際関係を学んでおり、なかには日本経済や日本語を専攻している人もいました。

日本滞在中には、専門家による講義や工場見学、学生同士の意見交換会などが行われたほか、日本文化体験の一環として、いけばなや茶道を体験して8日間の日程を終えました。

今回の参加学生は、全員が昨年日本人学生がモスクワを訪問した際にお世話してくれた人たちだったこともあり、日本での再会を喜ぶ姿が印象的でした。



招聘期間

平成22年4月8日 ― 4月15日  8日間


参加者数

14名


滞在日程

4月  8日 (木)  成田到着後、外務省表敬

4月  9日 (金)  一橋大学でのプログラム

4月 10日 (土)  一橋大学学生との都内見学

4月 11日 (日)  京都へ移動

4月 12日 (月)  京都大学でのプログラム

4月 13日 (火)  京都大学学生との市内見学

4月 14日 (水)  日本文化体験(茶道、華道)、東京へ移動

4月 15日 (木)  帰国

外務省にて




まずは東京でのプログラムについて、一橋大学の代表者の方のレポートをご覧ください。


4月9日(金)


日露青年交流センターが主催したロシア国立高等経済大学と一橋大学の学生交流事業が,2010年4月9日(金)一橋大学において行われた。

当日は午前9時からの講義の開始とあって,ロシア人学生は8時半には一橋大学に到着し,東キャンパス・マーキュリータワーにおいて,加藤哲郎・一橋大学名誉教授による「日本の社会と政治」をテーマとした講義を受けた。講義では,日本の憲法,政権交代,労働・社会問題といった大きなテーマに関して日本の状況が詳しく説明された。その後の質問コーナーでは,自由貿易協定,グローバル化した経済における国家介入の問題,伝統的な家族形態,ワーク・ライフ・バランス,日本の終身雇用制,といった幅広い質問がロシア人学生から加藤教授へ投げかけられ,彼らの日本への関心の深さをうかがわせた。彼らの中には,日本の経験を自国や途上国の問題にどのようにして吸収し,生かすことができるか,ということへの関心があるようであった。



講義終了後,構内を散策しながら,一橋大学の概要が説明され,その後,国立駅近くの日本料理店で昼食となった。昼食では純日本風の弁当がふるまわれた。昼食後ロシア人学生一同は東芝府中事業所へとバスで向かった。

ここは特に環境保全活動に力を入れている事業所である。はじめに府中事業所の紹介DVDを見せていただき,府中事業所の環境活動への取り組みに対する説明を伺った。その後特別に手配してくださったバスに乗車して施設巡りに出た。まず到着したのは,食堂排水処理施設だった。ここで専門のスタッフの方から,実際の処理水のサンプルを見せていただきながら,高度濾過技術を用いた排水処理の流れを伺った。次に事業所内にある別会社の廃棄物リサイクルセンターを訪れた。そこでは,事業所から排出されたパソコンや椅子などの物品が細かく裁断・分別処理される様子を垣間見ることができた。ここでもパソコンの基盤がどのような仕組で自動的に分別されるのかといった質問がいくつも出された。ロシアではまだ省エネやリサイクルといった観念は珍しく,ロシア人学生たちにとって大変興味深い経験になったように見えた。



ロシア人学生は若干の疲れも見せていたが,一橋大学・佐野書院に戻り,しばしの休憩をとり,一橋大学におけるメイン・プログラムである学生意見交換会に備えた。そこでは,「日本社会はどのようなものか」ということを中心的な問題意識の中心に添え,3つのテーマに関して学生間で議論が行われた。当初はそれに加えて自由討論を予定していたが,残念ながら,時間の都合上3つの議論に終始せざるを得なかった。第1のテーマは,「経済発展と幸福度」である。日本は高い経済水準を維持しながらも,その幸福度という点においては,必ずしも同程度の発展水準にある欧州諸国に及んでいない。その理由が説明され,幸福度を決定づける要因の将来の状況を考慮したうえで,未来の日本の幸福度が上昇するかどうか,という議論が行われた。また,ロシアが経験したドラスティックな変化と幸福度の変遷が言及された。ロシア人学生は理論的な側面に関心をもったようだ。第2のテーマは,「社会問題と企業」であった。ここでは,社会問題をNPOやNGOとしてではなく,ビジネスとしてどのように取り組むか,ということがいくつかの日本の事例を基に紹介された。女性の社会参加,人口問題,高齢化,過疎化といった日本の抱える大きな問題の背景が説明され,そこに立ち向かおうとする人々・企業の試みが取り上げられた。同様の問題を抱えている,もしくは今後抱える可能性のあるロシアにとっても興味深い問題であるようであった。



最後に,一橋大学に留学している「留学生から見た日本社会と一橋大学」に関する報告が行われた。日本に来た時の印象と今の印象,日常生活,自然環境,大学,勉強といった多くの事柄が説明され,日本の独自性(ときおり奇妙さ),良い点や悪い点といった主観的な側面からの日本観が紹介された。ロシア人学生の中には,日本を訪問したり,滞在し勉強したりする学生が何人かいたせいか,留学生による報告は彼らにとっても大いに賛同するところがあるようであった。実際に,このセッションが一番の盛況を呼んでいた。



こうして,2時間にわたる学生意見交換会を終了し,レセプションとなった。ここでは,意見交換会では発言できなかった日本人学生もロシア人と積極的に交流し,次の日の都内散策での再会を約束しあった。最後に学生代表の田中さんが一本締めをし,プログラムを終了した。(了)




翌日は3つのグループに分かれて一橋大学の皆さんが都内を案内してくださいました。


東京をあとにした一行は、新幹線で京都へ向かいました。
京都では、京都大学の皆さんにご協力をいただき交流プログラムを実施しました。


4月12日、13日の活動の様子は、京都大学の学生代表の方のレポートをご覧ください。


4月12日(月)
レクチャーとラウンドテーブルについて

簡単なオープニングセレモニーの後、2つのレクチャーが京都大学の経済研究所1階会議室にて行われました。

1つ目のレクチャーは溝端佐登史教授の『経済危機のもとでの日本の経済システム』と題されたものでした。内容は、変化しつつあった日本の企業システムが、経済危機によっていかなるインパクトがもたらされたかについてで、日本の経済について研究しているロシア人学生もいたようで、皆一生懸命聞き入っていました。

2つ目のレクチャーはJohn Breen教授の『日本の文化・歴史―明治天皇と近代化』と題されたものでした。先生は、明治天皇と皇室の関係などを歴史的な史実に基づいて、ロシア人学生にも分かりやすいようにヴィジュアルなレジュメを用いて、講義されました。日本の文化や歴史に関心の高いロシア人学生は興味深く聞き入っていました。

2つのレクチャーの後、コーヒーブレイクをはさんで、学生同士のラウンドテーブルが2つのテーマにわたって行われました。

まず1つ目のテーマは、経済危機について日露双方の事情を発表しあい、日露双方における経済危機の現れ方の違いについて、議論を深めました。


次に2目のテーマは、日露の大学教育、就職活動、労働慣行について、互いに発表しあい、その違いについて意見を交わしました。

2つのテーマのディスカッションを通して、それぞれのテーマについて、日露双方の違いについて議論でき、理解を深めることができたことは良かったと思います。その後は、会議室でランチを取り、三菱自動車太秦工場にバスで向かいました。



三菱自動車太秦工場の工場見学

三菱自動車太秦工場に到着すると、まず会議室にて、担当の方から三菱自動車の概要や当工場の概要、見学時のルールについて説明を受け、担当の方の案内のもと、三菱自動車のマークを冠したブルーのキャップを被って、工場見学に行きました。

三菱自動車はロシアにも多くの車を輸出し、また工場においてはその主要部分であるエンジンを製造していることもあり、担当者の詳しい説明のもと、日露双方の学生とも興味深く工場を廻らせてもらいました。また、工場見学の最後に今話題の電気自動車にロシアの学生数人を乗車させてもらい、彼らに感想を聞くと感激したとのことでした。



工場見学の後、最初の会議室に戻って質疑応答が行われました。ロシア人学生は、電気自動車のことなど疑問点を担当の方に熱心に聞いていました。全体として、ロシアにも関係の深い三菱自動車工場の見学を通して、特に日露の経済的なつながりについて理解が深まり、充実していました。その後は、夕食の為、がんこ高瀬川二条苑店にバスで向かいました。


夕食、がんこ二条苑店にて

夕食については、日本らしいものを、京都らしいものをということで、がんこ二条苑店にて、魚料理を中心とした日本料理、京料理を楽しんでもらいました。まず、夕食の前に30分ほど時間があったので、お店の中にある大きなお庭を散策しました。その時は雨が降っていましたが、ロシア人学生に感想を聞くと「庭の苔が雨に濡れている姿が素晴らしい」と言っている学生もおり、日本文化の一端を感じてもらったのではないかと思っております。

その後、高等経済大学ヴィノクーロヴァ先生や経済研究所所長矢野教授などの挨拶の後、なごやかに、各テーブルに分かれて日本料理、京料理の数々を頂き、楽しい歓談の場となりました。私の席では湯葉は何からできているのかなど、出てきた料理の由来などについて楽しく会話を交わしたのを覚えています。がんこでの楽しい会の後は、ロシア人をホテルまで送り、交流1日目が終了しました。


4月13日(火)京都散策

交流2日目は、午前と午後に4グループに分かれて、主要な寺院や名所を中心に京都散策を行いました。

私の班は、東山地域を中心に周り、平安神宮、清水寺、かっぱ寿司で昼食、寺町通り散策という形を取りました。

まず平安神宮では、広大な本宮を参拝した後、大きな庭園を1時間ほどかけて回りました。そこでは、撮影中の舞妓さんの姿があり、ロシア人学生もシャッターチャンスを逃すまいと夢中で写真を撮っている姿が印象的でした。清水寺では、境内に桜がまだ残っている中、ゆっくりと参拝をし、京都を一望できる清水の舞台からの景色を楽しんでいました。清水寺を参拝し、おみやげを選んだ後は、三条に戻り、かっぱ寿司にて昼食を食べ、ロシア人学生は、初めての回転寿司に喜んでいました。その後、寺町商店街で日本のCDや本などの買い物をして、大学に戻りました。ロシア人学生と楽しく1日をかけて京都を散策できたことは、日露双方の学生にとって良い思い出になったと思います。



京都大学吉田食堂にて懇親会

折り鶴に挑戦

豆掴みゲームは声援も必死



交流の最後は、吉田食堂にて立食の懇親会という形を取りました。簡単なあいさつの後、しばし今日の散策の感想などを歓談しあった後、様々なゲームやイベントで楽しい懇親会となりました。具体的には、豆を箸で掴んで皿に移すゲームでは、各グループ白熱した戦いで楽しかったです。また日本の文化として折り紙の体験や、柔道の実演なども盛り上がりました。最後は、日露双方の代表的な歌を日露の学生一緒に歌って、懇親会が終わり、名残惜しくロシア人学生を彼らが泊っているホテルまで送り、2日間における交流が終わりました。ロシア人学生とは様々な事を語り合い、有意義な交流となりました。(了)



次の日は午前に茶道、午後はいけばなといった日本の伝統文化を実際に体験しました。



京都駅では別れに涙する場面もありました


前回のモスクワに引き続き、今回さらに新たな友人ができ、お互いの国をより身近に感じられるようになりました。これからもこの出会いを大事にしていきたいと強く感じた旅でした。



 
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