日露青年招聘・派遣事業

サンクトペテルブルク国立大学法学部国際学生会議参加者レポート

XTH INTERNATIONAL STUDENTS' LAW CONFERENCE
«Law Collisions and Gaps in Legislation»



2010年3月19から21日までサンクトペテルブルク国立大学法学部で開催された第10回国際学生法律会議に日本から法学部の学生・大学院生5名が参加しました。日本からは3度目の参加でしたが、英語の分科会では、参加者の波多野綾子さんがベストスピーカーに選ばれました。
波多野さんのプレゼンテーション要旨はこちら (PDFファイル)


1.2010年 国際学生法会議(iSLaCo’2010)概要

(1)主催: サンクトペテルブルク大学法学部学生学術協会

(2)開催期間:2010年3月19日~21日

(3)テーマ:「法の不一致と法制度の不備」(Law Collisions and Gaps in Legislation)

(4)会議での使用言語:英語(ないしロシア語)

2.派遣日程

3月17日 成田発

3月18日 総領事館訪問、郊外視察

3月19日 会議第1日目(開会式、法学部内視察、分科会、文化プログラム)

3月20日 会議第2日目(市内バスツアー、特別講義、分科会、閉会式)

3月21日 市内視察、交流プログラム

3月22日 サンクトペテルブルク発帰国

3月23日 成田着

3.事前説明会

3月3日、外務省の会議室で事前説明会を行いました。日露青年交流事業の概要や、ロシア情勢、日露関係についてブリーフィングを受けた後、昨年この会議に参加された河手、中村、松田、持留さんから経験談を聞きました。昨年の経験を踏まえたアドバイスは、参加者にとってよい刺激になりました。

4.詳細日程 (参加者の今岡植さんのレポートです。)

3月17日(水)

いよいよ待ちに待った出発日がやってきました。成田空港に午前10:30に集合し、モスクワ経由、当日の21:20頃にサンクトペテルブルクに到着しました。空港では会議のスタッフらが迎えに来てくださり、30分ほどで寮に到着し、期待に胸を膨らませながら寝床についた。



3月18日(木)

昨晩コンビニで買っておいたパンを朝食にとり、日本語ガイドさんと寮で合流した後、総領事館へと向かいました。総領事館では総領事、副領事からの日露関係、サンクトペテルブルクについてのブリーフィングを受け、ロシア人の親日性は-例えば漫画等コンテンツ分野に関してはクリエイターの素質などが大きな要因であるのは言うまでもありませんが-総領事館を中心とする日本政府の支援の力も大きいことを痛感しました。更に、日本人の対露関係が相対的に芳しくないことに関しては、今後私たち参加学生を中心とする若い世代による努力の重要性を感じました。

<エカテリーナ宮殿>

その後、華美で荘厳なエカテリーナ宮殿で観光しました。ガイドさんの仔細な説明は、当時のロシアの情報を把握する上で極めて有用なものでした。次にイサック聖堂にてロシア正教ならではの教会を満喫した後、副領事との食事会でロシア料理を堪能し、明日の会議に期待と不安を持ちながら就寝しました。



3月19日(金)

朝食を済ませ、会議のため大学へ向かいます。大学に着くと、早速サンクトペテルブルク大学法学部出身のプーチン首相とメドヴェージェフ大統領の写真が飾ってあることに気持ちが高揚しました。会場は極めて趣があり、広大でもありました。開会式まではフォトセッションのように各自ロシア人学生と写真を取り合いました。開会式の後は法学部内を視察し、提供される簡単な昼食を取り、いよいよ分科会へと進みました。分科会では英語セクションに配置されるのですが、ハンガリー、ドイツ、ロシア、スウェーデンから教授や准教授その他優秀な学生が集まっており、各自のプレゼンは大変専門的で勉強になりました。やや専門的過ぎるとお互いに議論できなくなる場合もあるので、一定程度は普遍的な議題を設定するのがお勧めです。私自身は「国内法の不一致解消のための国際私法を始めとする諸制度」という比較的普遍的なテーマで発表したため、質問をたくさん頂き楽しく議論できたと考えています。他の日本人学生も面白い論点を次々と発表し、投票で日本人学生の一人がベストスピーカーに選ばれました。夕食は会議で知り合ったロシア人の友人数名とレストランに行き、友好を深めました。



3月20日(土)

午前中は会議主催のバスツアーで市内を観光しました。昼食を済ませ、午後は法学部教授らによる講義を聞いた後、昨日発表できなかった学生の発表を分科会にて聞きました。閉会式を終え、記念撮影をした後、一度帰宅し非公式のクロージングプログラムへと臨みました。ここではロシア人学生の伝統的なダンスの披露や日本人学生がステージで踊るなどなかなか面白い経験になりました。本場のウォッカを堪能し、楽しいひと時を(夜遅くまで)過ごしました。



3月21日(日)

最終日は現地で知り合った学生と午前中にエルミタージュ美術館へと向かいました。世界的に著名な美術館の名に恥じぬ、外観や内蔵品ともに非常に素晴らしい美術館でした。その後日本人は二手に別れ、私はロシア美術館とサンクトペテルブルクで一番大きいデパートでお土産を買い、マリンスキー劇場でオペラを鑑賞。最終夜にふさわしい感動的な経験になりました。明日この場を去るのかと思うと、寂寞の思いが押し寄せてきました。



3月22日(月)

最終日もこちらでお世話になっていた大学院生で弁護士のニキータ・コフの見送りに感謝しながら、サンクトペテルブルクを後にしました。サンクトペテルブルクは、本当に美しい街で、人も素晴らしく大変に充実した時間を過ごすことができました。この旅を可能にしてくれた色々な人に感謝をしながら飛行機へと乗り込みました。



5.参加者の声(所属は参加当時のものです)


◎ 今岡植 (早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科4年)

国際学生会議では、学生全員に発表の機会が与えられ普段の学習や問題意識をロシア人を始めとする優秀な外国人と交換するのみならず、そこからの議論によりシナジーを生み、法律やそこから派生する様々な議論に関する幅広い知見と奥深い知識を得ることができます。

課外活動でも、総領事館によるブリーフィングや日本語ガイド等によるツアーなどロシアやサンクトペテルブルクについての歴史的、政治経済的事実を得ることができると同時に、実際に目の前にいるロシア人とのリアルな情報交換、更にその二つの比較等も楽しめます。このような貴重な機会を与えていただき感謝したいと同時に今回の経験を今後日露関係の向上のために生かすことを約束します。再度の訪露を心に誓います。



◎大澤昂佑(慶應義塾大学法学部政治学科4年)

渡航前は、北方領土の問題やグルジア紛争などを抱えるロシアという国に対し、勝手な悪いイメージも持っており、行くことをかなり不安にしていたのですが、とても気さくに親切に話し掛けてくれるロシアの学生との交流や、大変綺麗な街並みを持つサンクトペテルブルク市内の視察を通して、そのようなイメージはすぐに払拭され、この滞在を通してロシアという国に大変興味を持ち、是非再度ロシア(次回はモスクワも訪れてみたいです)を訪問したいと思いました。この素晴らしいプログラムに参加できたことは、本当に幸運だったと思います。


特に、多くのロシアの学生が日本の事に興味を持ち、松尾芭蕉の俳句、日本の寺院、そしてNARUTOやBreechなどの日本のアニメや漫画のことをよく知っていることに驚きました。私達が日本人であると言うと、日本の事を次々質問してきて、「いつか日本に行ってみたい」と言ってくれます。到着の次の日に領事館の方から「ロシア人の8割が日本を好きなのに対し、日本人の8割はロシアが好きでない」というギャップが生じているというお話があったのですが、その後の滞在を通して、ロシア人が日本に好意的だということを実感致しました。日本に興味を持ち滞在中に私たちが助けを求めれば親身になって助けてくれたロシアの人々、美味しいロシア料理、美しい街の建築物など、様々な素晴らしい側面をもつロシアに対して、旧ソ連、北方領土や連邦内の民族紛争などの一面的な側面だけから好きでないとなってしまうのは、大変残念で勿体ないことだなと思いました。私自身、渡航前はあまり良い感情を抱いていなかったので、実際に現地に赴き、その国の文化を体験するという国際交流の機会の重要性を実感致しました。今後私自身も、何らかの形で領事館の仰っていた両国間のギャップを埋めていくことに寄与して、両国の友好関係の発展に繋げられればという思いを新たにしました。

また、会議にて会った学生が国連でのインターンを経験していたり、様々な学位をもっており、さらには、当然のことながら高い英語能力をもっており、大変良い刺激となりました。

このような素晴らしいプログラムに参加させて頂き本当にどうも有り難うございました。


◎松下佳世(東京大学大学院 公共政策教育部 専門職学位課程1年)

会議に参加していた学生は皆積極的で、自分の軸をしっかり持っており、自分の専門分野のみならず、自分の知識や考えを基に、他の発表者に対しても率直に意見や質問をする姿勢がとても印象的でした。自分自信の反省点としては、もっと事前にEU法やロシアの法制度についての理解を深めておくべきだったと思います。また、日本の法制度や政策についても多く質問があり、自国の法や社会制度について理解し、他の文化や社会圏に属する人々にも的確に答えられるように勉強しなければ、と志を新たにしました。

また、会議後にカザン大学の学生から「私の大学の法律会議にもぜひ参加して!」と言われたときは、本当に嬉しく思い、異なる価値観を持つ人々とも積極的に関わろうとする彼らの力強さを感じました。日本に対して友好的な学生が多く、今後ともこのような交流の機会が増えていくと、ロシアも日本もより良い方向へ変わっていくのではないでしょうか。

視察や学生との交流を通じ、ロシアはまさに変遷期にあり、社会の変化とともに国際社会においてもそのプレゼンスを増していくのだろうと実感しました。私や彼らが今後学生という立場を離れても、iSLaCoを通じて築いたネットワークや友好関係を長く続けて行く事ができたらと考えています。



◎波多野綾子(東京大学法学政治学研究科(法曹養成専攻1年))

参加したプログラムで、結果として、以下のようなすばらしい経験を得ることができました。まず第一に、「ロシア」に対する印象が確実に変わった部分があることです。一言でいえば、「ロシアはとても寒いが、とても温かい人々がいる」ということ。いえ、むしろロシアという国の漠然としたイメージだけではなく、一人一人の人間の顔を見ることができるようになったというほうが正しいかもしれません。


まずロシアに到着してから出発するまで、忙しい時間の合間をぬって本当に一生懸命サポートしてくれたニキータをはじめ、ロシア語がわからずタクシーすら自分たちで呼べない私たちをロシアの学生たちは快く助けてくれました。

また、言葉は違っても、人懐こく話しかけ、笑いかけてくれる学生たちと、とりあえず写真とろう!というような雰囲気の中で、打ち解けるのに時間はかかりませんでした。正直今までロシア人と親しくつきあったことがなく、このようなフレンドリーな印象がなかったため(数年前に乗ったアエロフロートの酷い対応が第一印象でした)、本当に嬉しいことでした。領事館で、ロシア人は一度友人になると本当に温かい、というお話を伺いました。旧ソ連時代の助け合いや共同体の精神が残っているのではないかと。裏返せば、まだまだ「法の支配」は行き届いておらず、「人の支配」や「コネ」の大きさといった側面もあるのですが、物事は一面のみを捉えて考えることはできないのだと感じました。

第二に、法学生会議で、プーチンやメドベージェフを輩出したサンクトペテルブルク大学法学部を見学し、その学生と議論できたことは本当にすばらしいことでした。英語セクションの発表では、ハンガリーやポーランドなど、日本ではなかなか知ることのできない国の法律事情を知ることもできましたし、自分も「人道的干渉」について、日本の立場や憲法の問題なども交えて発表し、ベストスピーカー賞もいただくことができました。また、中国や北欧で教鞭をとった後、現在は本大学で教えている教授から各国の比較の話を伺ったり、また、学生と北方領土など日露間に横たわる問題を率直に話すことができたことも貴重な機会でした。


◎鈴木栄之心(慶應義塾大学法学部法律学科3年)

今回の派遣事業の中で気付いたことが3つあります。1つ目は、ロシア人学生の自信の強さです。彼らの言葉1つ1つにネガティブな思考はなく、他国に頼らずに自分たちで国家を強くしていくという自信が随所に垣間見れました。サンクトペテルブルクは美しい街ですが、一方でインフラ整備や法整備の必要性は否めません。今回出会った学生の多くが今後のロシアを発展させていく大きな原動力となっていくのだと思います。


2つ目は、国のあり方に対する考え方です。ロシア人学生は「ロシアには強い指導者が必要である」と話していました。この「強い指導者」という概念は日本でいう「強いリーダーシップ」とは違ったものであると思います。発展途上で、欧米に追いつき追い越したいと思っているロシアならではの考え方であるように感じました。3つ目は、将来の職業への強い意欲です。ロシア人学生と会話している中で、お互いの政治制度や法制度の相違を説明し合うことで、新たな興味が湧いた機会が数多くありました。自分だけではなく、相手にも積極的に質問し疑問を問いかける姿勢は、将来彼らが新制度の構築やより良い政治体制に携わっていきたいという意欲を反映させるものでした。

今回の派遣事業は、私にとってかけがえのない思い出となりました。全ては、ロシア人学生の人間的な温かさ、優しさのおかげです。そして私は今、自分が幸せな立場にいるということに気付くことが出来ました。それは、今度は私達がロシアから来る学生や会議で出会った国の学生を日本に迎えることが出来るからです。滞在期間中にあらゆる面でお世話になったニキータが、忙しい中、私達が少しでも快適に過ごせるようにサポートしてくれているその姿を見て、改めて国際交流の素晴らしさを感じることが出来ました。忘れてはならないことはこれがスタートであるということです。ロシア人学生は彼らの友人に、日本人学生は私達の友人に、どの様な交流があったのかを次へ次へと伝えていき、同時に私たちが絶え間なく交流を重ねていくことで交流の輪は広がっていくのだと思います。今後、私が日露交流の懸け橋となり、両国の発展に貢献できるように、全面的に協力し積極的に交流していきたいと思います。


無題ドキュメント