日露青年招聘・派遣事業

ロボット技術分野の学生派遣プログラム
(2009年11月22日~11月29日)



本プログラムは、ロボット技術分野の青年交流というロシア側提案が、まずは日本人学生派遣という形で実現しました。大学ロボコンの最多優勝校である豊橋技術科学大学の鈴木新一教授のご協力を得て、ロボット技術分野の学生たちがロボットを持ち込んでロシアを訪問しました。この分野での日露青年交流は初めての試みでしたが、ロシアでは新聞やTVで報道されるなどメディアの関心度も高く、また、双方の参加者にそれぞれの国のロボット技術教育・研究の特徴が印象に残る良い交流の機会になりました。


以下、同行の豊橋技術科学大学宮城・竹内両職員の報告に基づくレポートです。

鈴木新一教授を団長とする我々16名(豊橋技術科学大学教職員3名、豊橋技術科学大学ロボコン同好会9名、東京大学学生2名、金沢工業大学学生2名)は、2009年11月22日から11月29日までモスクワを訪問し、現地学生、マスメディア向けロボコンの実演や日本のロボット技術等に関するデモンストレーション等を行うとともに、ロシアにおけるロボット工学の現状を視察しました。

11月23日(月) ~未来のロボット技術者達との交流を通じて~

モスクワ市内にある情報技術・教育設備センターを訪問しました。ロシア・ロボット工学の権威であるワシリエフ教授による講義ののち、ロシア中等教育におけるロボット教育の現状に関するプレゼンテーションがありました。ロシアの有する研究ポテンシャル、例えば航空技術における先端性などは特筆すべきものがあり、また、特に青少年に対するロボット技術の普及に注力している点など非常に積極的な印象を受けました。最後に鈴木教授が我が国におけるNHKロボコンの紹介とともに、災害救助用ロボット、介護ロボット等、今後展開が期待されるロボット工学について講演を行いました。特にNHKロボコンの模様は会場のロシアの青少年らの興味を引き、身を乗り出して見る少年達の姿が印象的でした。



11月24日(火) ~専門教育としてのロボット工学の拡充~

モスクワ国立大学力学研究所においてロシア側教授3名による専門講義が行われました。

専門講義の前半は、50年前に設立され、空気力学の教育設備や、超音速の風洞を設備として備えている力学研究所の紹介、アルゴリズムを用いたロボット視力の開発、医学分野への応用可能性を模索している点などの紹介がありました。日本側学生にとっては刺激的な内容で、活発な質疑応答が交わされました。

講義の後半ではイノベーション創出、知的財産に関する講義が行われ、ロボット工学を通じ、ベンチャー企業を育成し、新たな産業分野として確立することを国家としての確固たる狙いとしているように感じられました。



11月25日(水) 記者会見及びロシア・ロボット技術パッケージ作成のための学術トレーニングセミナー



ロシア有数のメディアであるリア・ノーヴォスチ社において、鈴木教授、今村在ロシア日本大使館公使、ロシア青年問題局長等による共同記者会見が実施されました。ロシア側からはロボット工学に注力する背景として、科学技術関連人材の不足、若者の技術に対する関心の低下、有能な技術者の国外流出防止のためロシア国内でビジネスチャンス、新たな産業を創出することが必要であることが紹介されました。日本側からは、NHKロボコンで連続優勝している豊橋技術科学大学の鈴木教授が、科学技術に関心を持って欲しいという背景から誕生したNHKロボコン及びABUロボコンの魅力について紹介が行いました。



11月26日(木)~27日(金) 日本側ロボコン及びロシア側ロボットのデモンストレーション

今回のプログラムにおけるメイン・イベントであるロボットのデモンストレーションを学生、マスメディア向けに実施しました。準備段階からロシアの学生や研究者らが多数立ち止まって作業の様子を興味津々に覗いたり質問したりするなど関心が高く、また慣れない環境であるにもかかわらず手際よく業務分担し、準備を行う学生らの姿は非常に頼もしく見えました。


そして実演。NHKロボコン2008のルールに基づき、ゲームの模様が再現されると、どこからともなく歓声や拍手が起こり、言葉は通じないけれども、「テクノロジーとはいわば世界共通の言語である」ということを学生とともに再認識しました。翌日のマスメディア向けの実演でも、学生や鈴木教授は各報道機関から様々な質問が寄せられ、ロシア国内における日本のロボット技術のプレゼンスを存分にアピールできたのではないかと思います。




ロシア側もモスクワ国立大学やモスクワ航空大学が自作ロボットのデモンストレーションを行いました。
ロシアでは基礎研究の実証を行う上でのロボット作成を重視しているようで、この点が日本との大きな考え方の差異ではないでしょうか。


なお、最後のプログラムとして日露共同チームによる対抗戦を実施する予定でしたが、その準備時間にあまりにも議論が白熱したためロボット作成の時間が足りなくなり、実施できなくなるというハプニングもありました。しかし、この事実自体、今回のプログラムがいかに双方にとって大きな関心を持って実施されたのかを示す明確な証拠ではないでしょうか。


異国の慣れない環境下でロボットのデモンストレーションを行うという今回のプログラムは、学生にとって非常にエキサイティングであり、またかけがえのない経験になったのではないでしょうか。また、現地学生等との質疑応答や交流を通じて異なる視点からのものの見方や捉え方に触れ、非常に良い刺激になったと思います。

今回の訪問は、日露両国のロボット交流にとってはまさに小さな一歩なのかもしれません。しかしながら、今回の訪問が偉大な飛躍の一歩となることを願って止みません。

参加者の声


新居達也さん(豊橋技術科学大学大学院)



ロシアで見せてもらったロボット競技は、日本のマイクロマウスや知能ロボコンに近い、専門性が高い競技だった。逆に、TVショーとして成功しているロボット競技は無く、鈴木先生のNHKロボコンの講演を興味深く聞いていた。NHKロボコンにはスピードや戦略が重要で、試合が白熱して見るのも参加するのも面白い。だからTVショーとして成功し競技人口も多いのだが、TVショーだから学術的・工学的なチャレンジよりも個人の努力や人間ドラマが取り上げられることが多い。

ロシアで見せてもらった移動性プラットフォーム・コンテストのロボットはどれも高度な制御を行っていて、理論先行でのロボット製作は、やはりロシアは理論と数学の国だと感じさせた。もしNHKロボコンやABUロボコン(世界大会)に出場できるならば、対戦競技用に少し改良が必要だが、ぜひ参加してほしい。僕たちがロシアで刺激を受けたように、日本や他のアジア勢に良い刺激を与える大会になると思う。


牛嶋裕之さん(東京大学工学部)



今回のプログラムでは、ロシアで行われているロボット研究やロボット競技会について、モスクワ大学の先生の講義を受けたり、実際にロシアの学生が作ったロボットを見たり、ロシアの学生とロボットについて意見交換をしたりすることで、日本とロシアのロボット分野に関する共通点や違いを知ることができました。日本のロボット競技大会について、その映像を見せたり、実際に大会に出場したロボットのデモンストレーションを行ったりして、ロシアの学生に知ってもらったのですが、ロシアの学生には、日本のロボット競技大会がエンターテイメント性に溢れていることが珍しく映ったようでした。その後の意見交換会でも、ロシアの方が日本のロボット競技について多く質問しており、「ロシアのロボット競技会も日本のように楽しく競争心溢れるものにしたい。」と言っていたことが印象的でした。日本のエンターテイメント性を持つロボットに対して、ロシアの学生が作ったロボットは、どれも理論を駆使した知的な動きをするものであるという印象を受けました。日本とロシアで行われているロボット競技のコンセプトは違いますが、ロボット作りの楽しさや、苦労について聞いてみると、普段私たちが感じているものと共通しており、同じロボット作りに取り組む者として、親しみを感じました。




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