日露青年招聘・派遣事業

平成21年度派遣事業
ロシア国立高等経済大学日本人研究者・学生派遣プログラム




ロシア国立高等経済大学は、1992年にモスクワ国立大学経済学部の教授陣が中心となって設立された比較的新しい大学です。設立の目的は旧態依然とした経済分野の教育を改め、国際社会で通用する人材を育成する教育機関を作り上げることでした。現在はモスクワ本部の他に、サンクト・ペテルブルク、ニジニ・ノヴゴロド、ペルミに分校があり、21学部からなるロシアを代表する高等教育機関の一つに成長し、優秀な人材を輩出しています。

同大学はこれまで西欧諸国とは活発な学生交流を行っていますが、交流する機会が少なかった日本の諸大学との関係構築のため日本からも経済を専門に勉強する学生を受け入れたいとの申し入れがあり、今回のプログラムが実現しました。

滞在中のプログラムは、高等経済大学の大学院生と学部生が主体となって企画・運営を行い、テーマ別円卓会議や、いくつかの講義を受けたほか、連邦院を訪問したり、史跡巡りをしたりと、盛りだくさんの内容で、9日間の滞在はあっという間に過ぎました。


派遣期間

平成21年6月13日―6月21日 9日間


参加者数

12名(京都大学 8名、一橋大学 4名)


滞在日

6月13日(土) モスクワ到着

6月14日(日) 市内視察

6月15日(月) 高等経済大学でのワークショップ

6月16日(火) 円卓会議№1、№2

6月17日(水) 円卓会議№3-5、ロシア文化に関する講義

6月18日(木) 在ロシア日本大使館での日露経済関係に関する講義

6月19日(金) ロシア連邦院(上院)訪問,ロシア概論(於:高等経済大学)

6月20日(土) 市内視察

6月21日(日) 帰国



滞在レポート
第1日目

10時間の長いフライトを終え、モスクワのシェレメチェヴォ第2国際空港に到着すると、高等経済大学の学生3人が温かく迎えてくれた。大学のゲストハウスに落ち着くと、近くのウクライナ料理店へ。初めて本場のロシア(?)料理を味わう。ちょうど白夜の季節ということもあり、外は夜とは思えないほど明るく、予想以上に暖かい。



第2日目

明日からのメインプログラムを前に、ロシアの見聞を広めるために市内視察へ。日曜日にもかかわらず、不案内な私たちのために数人の学生が宿舎まで迎えに来てくれた。レニンスキー・プロスペクト駅から地下鉄に乗り都心に移動すると、そこにはさらに多くの学生が待ち構えていた。朝から夜まで動き回ったこの日の歩行距離は約20㎞!試験期間中にも関わらず案内してくれた皆さんに感謝の気持ちでいっぱいになった。




第3日目

大学に到着するとフルーミン学長、ジェレゾフ副学長とスタッフ、学生の皆さんが笑顔で出迎えてくれた。大学紹介のあと学食で昼食をとり、ロシア人学生とのワークショップで今回のプログラムのメインイベントが始まった。ロシア側はロシアの政治・経済、文化を紹介し、日本側もあらかじめ準備していた資料をもとに日本紹介を行った。

ワークショップのあとに18世紀の離宮が博物館として公開されているツァリツィノを見学。仕事や学校の帰りなのか、大勢の人たちで賑わっていた。なかなか陽が沈まない白夜を楽しむ市民の生活を垣間見たひとときだった。




第4日目

今日は、ロシア側の人たちを驚かせるために、全員に贈られた高等経済大学オリジナルロゴ入りTシャツを着て出かけることに。

今日と明日の2日間のメインプログラムは円卓会議。出発前から日本側の関心事項をもとに学生たちがプレゼンテーションを準備しておいてくれた。1日目は3つのテーマでディスカッションが行われた。第1回「日本とロシアの資本主義形態、日本型経済モデルの評価(Forms of capitalism in Japan and in Russia, Evaluation of Japanese Economic model)」。「ソビエトから現代ロシアに至る経済システム」、「社会主義時代から資本主義移行期を経たロシア経済体制の現状」を2人の学生が詳細に説明してくれた。日本側は日本の資本主義システムについて説明したあと、アングロサクソン型とは異なる両国の経済システムの今後について議論を交わした。 第2回「ハイテク分野における日露協力の可能性(Potential for Japanese-Russian Cooperation in the high-tech sector)」。ロシアのハイテク産業は未だGDP比1%程度にすぎないが、政府の積極的な産業政策によりその比率が急激に増えており、現在のロシアの資源依存型経済からの進化の一つの可能性があるという内容だった





円卓会議が終わると、大学主催夕食会に招待された。日露の学生が交互に席につき、ロシアの伝統的な家庭料理をいただいたあと、ゲーム、クイズなどの催しや、最後には双方の国の流行歌を披露するなど、楽しい交流の場面となった。



第5日目

今日は円卓会議第3回「経済領域における日露協力の可能性(Potential of Japan-Russia relationship in the economic field)」からディスカッションが始まった。ソ連時代には厳しい統制下でありながら、一部の分野で安定した日露貿易関係が存在していた。

ソ連崩壊に伴う停滞期を経て、急成長を見せている分野があること、貿易構造の転換、日本企業のロシアへのFDI(海外直接投資)活動についても言及された。第4回「何がプーチン氏の人気を支えているか?(What stands behind V.Putin’s popularity?)」というテーマで女子学生が発表した。その要因は「高度経済成長、汚職・犯罪への法制度の強化、社会秩序の回復、カリスマ性とイデオロギーに依らない存在であること」という内容だった。

これに続いてヴィノクーロヴァ博士による講義「異文化的側面からみたロシア文化(Russian culture through the focus of intercultural dimension)」を受けた。


その後円卓会議第5回「ロシアの外交、国内社会問題(Foreign Policy and Internal Social Issues of Russia)」が始まった。「独立国家共同体におけるロシアの外交政策」、「南オセチア紛争の歴史的要因(2008年8月7日~8月12日)」、「国家外交政策-CISとエネルギー分野」というテーマについて3人の学生が各自で用意した資料をもとに発表した。どの発表も日本側の関心事項に答える形のもので、ロシア人学生の率直な見解を知る貴重な機会になった。




第6日目

午後から在露日本大使館を訪問した。大使館の担当者により日露の学生を対象に日露経済関係についてのブリーフィングがあった。国家体制に左右されていた過去と現在の状況の違いなど、日本側の専門家から現状を知る機会が与えられた。



第7日目

この日は朝からロシア連邦院(上院)を訪問した。中には連邦内各州・共和国の旗が掲揚されていた。ワシリー・リハチョフ議員との会見では、経済、安全保障の観点から日露関係は重要であり、相互協力関係における若者の役割が強調された。

午後からは大学でロシア概論の講義を受けた。



ロシア最後の夜、ロシア人学生一同が日本人の宿舎を訪れた。ゆっくりと語り合う時間ももうあまり残されていない。



第8日目

今日はいよいよモスクワを発つ日。モスクワ川の遊覧船に乗り、川の上から街をしみじみと眺めた。充実した公式プログラムも終わりホッとしたのか、この数日間お世話になったロシア人学生の友人たちとの別れが辛くなってきた。集合写真を撮り、再会を期して宿舎を後にした。


今回のプログラムでは使用言語が英語だったため、ロシア語ができなくても英語や日本語でコミュニケーションをとることができました。充実した時間を共有したことが新たな友情の輪を生み、学生間の交流は今も続いています。同じ分野を研究している青年同士、共感する部分も多かったに違いありません。将来経済分野で活躍する若者たちは、今回の出会いを大切にして、両国間の経済関係に貢献してくれることでしょう。




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