基調報告


日露学生フォーラム2007 基調報告


日本側学生代表 福田健(東京大学教養学部)
1、序文

  みなさんおはようございます。今日はこのフォーラムのテーマである「日本とロシア―未来志向の発展の持続可能性」の論点のいくつかについてスピーチをさせていただきます。このようにみなさんの前で話す機会が与えられたことを非常によろこばしく思います。本題に入る前に発表の概略を述べます。私はこのスピーチを通じて、「持続可能」な世界の実現には何が必要かということを明らかにしたいと思います。それゆえ、特に「持続可能性」という言葉に注目していきます。この言葉については二つの意味を見ておく必要があります。例えば、最も一般的な意味としては、環境に関する文脈で使われます。しかし、このフォーラムの文脈からすれば、最も重要な要因はむしろ日ロ関係の持続可能性であり、環境の持続可能性ではありませんので、まず日ロ関係の持続可能性について考えてゆきたいと思います。そして後に環境面から持続可能な世界について言及したいと思います。

2、日ロ関係の持続可能性について

A、二国間関係

  持続可能な関係を築くためには、まず我々は過去を乗り越えなければいけません。日露の外交の歴史は必ずしも好ましいものではありませんでした。19世紀の終わりから、日清戦争とその後の三国干渉により関係は悪化し始めました。そして20世紀には二つの大きな戦争を経験し、第二次世界大戦では現在の両者の関係にとって最も大きな障害である、日本でいう北方領土問題(択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島)が生じました。これらの地域はそれ以来議論の的になり、日本政府がロシアと平和条約を結ぶことができないようにしています。もちろん、いくつもの領土問題を内部に抱えたロシアとしては、領土的な統一が最も重要な政策の一つであり、他の国や潜在的な「国」がその領土を保有するのは考えられないことです。実際に、北方領土には約17000人ものロシア人が住んでいます。しかし同時に、約8000人もの日本人が、島への帰還を求めています。この不安定な状態をできるだけ早く打開するためにも、日露両国に受け入れ可能な妥協案を模索することが必要です。私は話し合うことで問題をが解決し、我々が過去を乗り越えることができるようになると信じています。これは新しい関係への第一歩となります。

  また、我々は未来についても考えなければいけません。感情的、また地政学的な理由によって、日本とロシアはその関係の持つ潜在的な利益を享受できていません。ロシアの首都モスクワは西部に位置しており、歴史的にロシアは東アジアの国々よりもヨーロッパと近しい関係を持ってきました。それゆえ少なくとも日本人にとって、ロシアは最も近い国であると同時に最も分からない国の国でもあります。しかし言い換えるとまだ改善の余地があるともいえます。
2003年、日露行動計画が採択されましたが、これにより日ロ関係の方向性が様々な領域で示されました。その中で最も注目すべきは貿易分野と人的交流の分野です。あるデータによれば、日米間で交流した人の人数は日ロ間のそれの約30倍、日米間の貿易額は日ロ間のそれの約15倍にもなります。これは日露間交流が十分でないことを表わしています。政治的な交流も重要ですが、やはり最も重要なのは人、物の具体的な移動です。私は今後の日ロ関係の持続可能な発展のためには、この行動計画を忠実に実行していくことが基本になると考えていますが、その中でもこの実質的な交流の重要性を強調したいと思います。この学生フォーラムはそのような試みの一種であり、必ずや非常に貴重な時間になると考えています。

B,多国間関係

  二国間関係はそれ自体を維持しようとするだけで必ずしも保てるとは限りません。持続可能な発展のためには、多国間関係も同時に保持するべきです。
  サンクトペテルブルグで開かれたG8サミットは、特にロシアにとって大きな成功となりました。プーチン大統領は現在の国際情勢、すなわちエネルギー安全保障や開発援助、それに核拡散防止についての議論を先導し、その結果は有意義なものでした。我々日本人は、六カ国協議、すなわち北朝鮮の人権問題に言及した議長声明を高く評価しています。
  それに関連して、私は六者会合について強調したいと思います。最近、日本やロシアにとって、その状況はよいものではありません。日本とロシアを除いた四カ国、つまり北朝鮮と韓国、中国、そしてアメリカは独自の会合を持つようになり、日本とロシアは蚊帳の外におかれているようです。我々はこの状況を見逃してはいけません。我々は議論において率直に発言し、そのプリゼンスを高める必要があります。
  またロシアは近年、熱心にAPECに貢献しています。それはプーチン大統領からAPECに寄せられた「ロシアは2012年のAPEC議長国を務める用意がある」と述べた寄稿文からもよくわかります。また、2012年のAPEC開催地はウラジオストクですが、ここからもロシアがAPECに貢献しており、なおかつ東部の開発に焦点をあてていることが予想されます。
  このようにロシアはいまや国際的な枠組みの中で積極的に他国と協力しあっています。この枠組みは、ロシアと日本以外の国の関係だけでなく、日本とロシアの関係も強化するものでもあると思います。この関係をさらに強化するためにも、私は来年開かれる洞爺湖サミットでは日本が責任を果たし、うまくリーダーシップをとることを期待しています。

3、環境の持続可能性

  最近、我々は以前よりもより環境汚染に注目しています。ドイツで行われたハイリンゲンダムサミットでは、温暖化が重要な関心事の一つであることが確認されました。八カ国は温暖化についてメインテーマとして真剣に語り合い、そこで日本は中心的な役割を果たしました。さらにここ北海道大学では、来年開かれます洞爺湖サミットの準備のために20以上の国際会議やワークショップが開かれることになっています。次のサミットで温暖化が再び主要テーマになるのは間違いないでしょう。我々は未来を考える上でこの問題を考えざるにはおれません。それでは我々はどのように持続可能な環境を実現することができるのでしょうか。
  まず、効率性に注目してみましょう。みなさんご存知の通り、ロシアには豊富な石油、天然ガス、針葉樹林などの天然資源が存在します。ちなみに、シベリアとアマゾンは、「世界の酸素工場」と呼ばれています。つまりロシアは環境に対して大きな責任を負っているといえるでしょう。もし日本が効率的な資源の効率的な製造方法を紹介することができれば、ロシアは製造時のロスを最小化できるでしょう。
  二番目は計画性についてです。その好例としてサハリン2プロジェクトがあります。このプロジェクトは、サハリンの石油や天然ガスの開発が目的ですが、環境破壊が原因でロシア政府は突然その中止を命じました。私はロシアがこのように、似たような状況において計画に則って思慮深く行動することを期待します。そして日本はこのような行動を投資や技術供与によって支えて行くべきです。
  環境問題は論点を多く孕んでおり、すべきことは数え切れないほどあります。しかし私はこの二つの理念は環境保護の基本となる考え方だと思いますので、ぜひとも頭に入れておいてください。

4、結論

  結論として、持続可能な世界の達成のためには、日本とロシアにはまだやるべきことはたくさんあり、いまだその関係は発展途上にあると考えてよいでしょう。この観点からすれば、我々学生ができることはそう多くはないかもしれません。しかし上にも述べましたように、日露の実質的な交流はこれからますます重要さを増してゆくでしょう。
  私は、我々がこの学生会議において未来へ向けて感情を共有し、自らが当事者意識を持って世界の未来について考えるきっかけになればと考えています。我々は歴史を担っている一人なのです。
  ありがとうございました。